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ソフトウェアは私たちに幸福をもたらすことができるのか

インフォテリアUSAと世界展開

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 5月15日(米国時間)、インフォテリアUSAの研究開発プロジェクトとして公開していた「Lingr」(リンガー)と「Rejaw」(リジョー)では今月末のサービス終了に向けて更新を終了しました。3月30日にインフォテリアUSAの閉鎖を開示、4月30日にサービスの終了をそれぞれのサイトで告知しましたが、インフォテリアUSAの閉鎖よりサービスの終了のほうが反響が大きかったのは、そのユーザー数からも当然のことかもしれません。

 インフォテリアUSAは、2005年に入ってから設立当初の目的であるASTERIAの米国での販売から研究開発組織に転換し、Web 2.0の震源地シリコンバレーでの研究開発拠点として活動を続けてきました。

 研究開発拠点となってからインフォテリアUSAでは、ブラウザをベースとしたリアルタイム性、双方向性を実現する技術に取り組みました。具体的には、Comet(コメット)というブラウザ上のプッシュを実現する技術に着目し、ブラウザベースのチャットサービス「Lingr」をリリースしました。さらには、Twitterなどのマイクロブログの台頭に呼応して、マイクロブログにリアルタイム機能をつけた「Rejaw」をリリースしました。また、インフォテリアの世界展開への実験として、「Lingr」では英語版のみを提供し、「Rejaw」では日本では意図的にプロモーションをしないということを行ってみました。  以下のグラフは、3月時点の「Lingr」と「Rejaw」へのアクセスの国別の分布です。日本語で提供を開始した「lino」(国外約3割)と違い、日本以外のユーザーを大きく獲得できていることがわかります。また、国別トップ10にも入っていませんが、スウェーデンでは「Lingr」がTVドラマのエミー賞受賞に貢献するということもありました。

■ Lingrユーザーの国別分布

Lingr-geodis8.png

■ Rejawユーザーの国別分布

Rejaw-geodis8.png
 さらに、「Lingr」、「Rejaw」のWeb APIを実装してそれぞれのアプリの開発が出来る仕組みも提供し、多くのLingrアプリRejawアプリをさまざまなエンジニアの方に開発していただきました。

 このようにインフォテリアUSAでは、いくつものトライを行いましたが、私たちが考えていたこと以外にも学んだことがいくつかありました。その中でも強く実感したことは、研究開発分野において、私たちベンチャー企業が大企業に真似のできない機動力を持つ「小規模のアドバンテージ」が、個人とベンチャーという間でも成り立つような環境が急速にに整いつつあるということです。技術的側面や普及モデルだけではなく、このような社会環境の変化も見聞することと経験することでは大きな違いがあったと考えています。

 インフォテリアUSAは、これらの研究開発活動で一定の成果を得られたことと、インフォテリアグループの研究開発拠点を中国など他の地域にシフトすることから、インフォテリアUSAの閉鎖を決め、併せてインフォテリアUSAで提供中であった「Lingr」、「Rejaw」のサービス提供も残念ながら終了することにしました。

 インフォテリアUSAを率いてくれた江島健太郎は、米国で引き続きチャレンジを続けたいとの思いもあり、インフォテリアUSA閉鎖後はインフォテリアを離れ米国でソフトウェア開発をしていくことになりますが、インフォテリアOBとしてこれからも日本にとらわれないフィールドでソフトウェアのポテンシャルを高めるシゴトをしてくれるものと確信しています。これまで、「Lingr」、「Rejaw」に参加していただいた方々、そしてインフォテリアUSAや江島健太郎に対して支援、応援していただいた皆様に心より感謝いたします。本当にありがとうございました。

 しかし、インフォテリアUSAの閉鎖は、インフォテリアの世界展開の終了を意味するものではありません。インフォテリアは、世界的に通用するソフトウェアを実際に世界的に提供していくために作った会社です。インフォテリアであるかぎり、世界のフィールドへのチャレンジは、勝つまであきらめません。それが、私自身ソフトウェアエンジニアのはしくれとしての夢であり、日本のソフトウェア産業の光明であると信じるからです。

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