クラウドが削減しているコスト
クラウドの本に書きたかったんですけど、誌面の問題でボツ原稿になってしまった事柄を、思い出しつつ、すこしずつここに書いてみたいと思います。(原稿残ってるから読み返せばいいのか)
今回はクラウドが削減する「コスト」についてです。
この話は、私のクラウドの話を聴きにきてくれた人は講演で聴かれたかもしれません。
先に明確にしておきたいですが、ここでは「クラウド=ネットでサービスされているもの」という前提でお話しています。安価なハードウェアを超スケールアウトのソフトウェア技術でつなぎ合わせたシステムのことではありません。
ネットでサービスされているクラウド・・・SaaS、PaaS、IaaSなどと言われますよね。私は、これらに共通の特徴は、
「動かしっぱなし」
「ネット経由で利用する」
「セルフセットアップですぐ使える」
ということだと思います。
アプリケーションが「ネット経由で使える」という表現だと「SaaSとASPは同じ」となってしまいますが、ASPは動かしっぱなしではないし、セルフですぐ使えません。そこが大きな違いです。PaaSはミドルウェアを動かしっぱなし、IaaSはハードウェアを動かしっぱなしにしておき、ネット経由で、セルフですぐ使えるサービスです。(もちろん、電力削減ソリューションなどで「動いてない時間帯は電力を落とす」ということはしていることもあるとは思います)
さて、なぜクラウドは安いのでしょう?それには二つのカラクリがあると思います。それは「余剰リソース」と「流通」です。
余剰リソースとは、コンピューターの「使われていない余裕の部分」です。コンピューターリソースは、100%使い切って動かすことは不可能です。余裕を持たせておかなければなりません。世界中のサーバーリソースの85%が余っていると言われていて、余りまくっています。とくに、ネットサービスをやっている企業は、何十万台、何百万台ものコンピューターを持っているので、その余り方は尋常ではありません。そこで、この余っているリソースを、様々な用途に再利用するのがクラウドの考え方のひとつです。余っているリソースを外に売るのですから、価格設定はゼロ円からできるわけです。安いはずです。
また、大きなデータセンターでは余剰リソースは共有できます。ひとつの業務のために組んだクラスターが10台あって、使ってないときは9台余っているとします。10種類の業務のクラスターが存在すると100台のコンピューターが必要ですが、空いているときは90台のコンピューターが余ります。すべてのシステムが同時にピークになるわけではなく、同時には3つのシステムしかピークにならない、としたら、40台程度のコンピューターで済むはずです。この余剰リソースの共有ができることもクラウドのコスト削減手法のひとつです。
これらを実現するには、標準的な(同じ種類の)ITリソースが大量にあって、仮想化されている環境で自動化されている必要があります。そういったテクノロジーを駆使することでクラウドが形成されます。
そして、流通。クラウドは流通方法がまったく違います。
コンピューターはハードウェアなら製造されたあと品質検査され、箱詰めされ、出荷されます。売るために、担当営業、技術サポート、マーケティングなどのコストがかかります。運送会社の人も働きます。設置作業員、導入作業員などもすべてコストです。
クラウドを自社で構築している場合はどうでしょうか。出荷はしませんので、箱詰めもなければトラックで運んだりもしません。多くのクラウドはマーケティング活動だけで、セールスはしません。設置作業も導入作業もしません。これらのコストがすべていらないので、早く手に入れられ、価格(支払額)も少なくなります。その「余計にたくさん働いている人」に報酬を払わなくていいわけですから。
これはハードだけでなく、ソフトウェアも同じで、クラウドの上で動かすだけならサポートセンターもいらないし、複数のOSに対応したバージョンを出す必要もありません。古いバージョンを「まだ使っているひとがいるから」と、いつまでも「サポート期間」といってサポートしつづける必要もないのです。これはコストが大幅に削減できます。
こうしてクラウドは、とても安い金額でITリソースを提供できるのです。