オープンソースを震災復興、日本の再建に活用しよう
東日本大震災から3週間が経過し、復興や再建の動きが始まりつつある。数十兆円もの莫大な費用がかかるとの試算が出ているが、必要な費用を賄うのと同時に、削減できるコストは可能な限り削減する工夫も必要だ。ITの場面では、さまざまなオープンソース・ソフトウェア(OSS)が貢献できるだろう。
私は最近UbuntuやopenSUSEをメインに使っている。メール、Web閲覧、ワープロ、表計算、ビデオ視聴など、一般的なオフィスでの用途はほとんど不自由しない。OpenOfficeやLibreOfficeは、オープンドキュメントフォーマット(ODF)に加えて、ワード(docやdocx)やエクセル(xlsやxlsx)形式のファイルも読み書きできる。マイクロソフトのOffice 2010もODFを読み書きできるので、官庁、自治体、企業はODFも受け入れるようにしてほしい。すでに大阪府交野市、会津若松市などの自治体がODFを採用しているが、さらに多くの企業や自治体がODFを採用できるようになり、慣れや予算に応じた選択の自由が広がる。
また、Linuxデスクトップには、Windows 7を動かすのはつらいスペックのPCでも快適に動作するという魅力もある。Linuxデスクトップによって、ライセンスコストとハードウェアコストを大幅に削減できるだろう。
サーバ分野では、すでにLinux/OSSは金融機関を含めて基幹業務でも幅広く使われている。被災で失われたシステムを再構築するにあたって、オープンソースもぜひ考慮していただきたい。また、開発したシステムをオープンソースとして公開し、業界全体で完成度を高めるとともにコストを削減する動きがクラウド処理系などで活発だ。このような方法論は、有用性を高めてコスト削減するのに役立つと思う。
今回の震災を契機として、災害対策を検討している企業も多いようだ。Linux-HAクラスタスタック(DRBD、Heartbeat、Pacemaker)は、可用性を高めるためのクラスタ基盤として認知が高まっているが、災害に備えたデータ保全のためのバックアップや、複数拠点にまたがるシステム全体の二重化など、ディザスタリカバリ・システムにも使われている。メインサーバのデータを数十キロ離れたセンターのサーバにリアルタイムでバックアップできる。米国のMidlandという自治体では、救急車や消防車などの緊急車両の運行管理システムを2箇所のセンター間で二重化し、テロや災害に備えている。
デスクトップ、サーバ、業務アプリケーション、ディザスタリカバリなど、さまざまな場面で利用できるOSSは数多い。OSSの本質的なメリットはソースコード公開やベンダーロックインからの解放などにあるが、短期間に多数のITシステムを再建しなければならないことを考えると、ライセンス料や保守料不要というコスト面のメリットは、はかりしれないほど大きい。