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もしも洞察力があったなら……。

【広報かるた】・【ず】ずいぶん記者が少ないね。はい今日は雨ですし、と最期の言い訳。

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「君、今日の会見はどのくらい集まりそうかね?」

 
社長にそう聞かれた広報担当者はなんて答えるべきでしょうか?
 
A. 「いっぱい来ますよ。超満員です。」
B. 「そうですね、xx名ほどです。想定の範囲です。」
C. 「イヤー今日はどうでしょうね。ちょっと少ないかもしれません。」
 
どれも選択しうる回答ですが、広報担当と社長の視点の違いについて考えてみましょう。
 
社長は、想定外は控えめな方を好みます。日々の事業で様々な困難に立ち向かい、ありとあらゆる想定外と対峙してきている訳ですから、広報案件であっても、想定外よりも、想定内の方が、「計画に沿っており、順調である」という自信に結びつくため、好んでいます。もちろん、「予想以上に人が来る」ことが全くダメという訳ではありませんが、「予想通りたくさん人が来た。」という文脈の方が広報と社長の関係においては適切と言えるでしょう。広報に対する信頼感も増します。
 
もちろん、C.の盛り上がらなさそうな文脈を伝えて、集まりが悪いことを想定の範囲内にしておくのも一つの方法ではありますが、少ないことを伝えるにしても、その会見に集まった記者が多いか少ないかの価値を相対的に決めていくのも広報のコミュニケーションの取り方一つで変わってくることを理解しなければなりません。ものすごく極端に言えば、
 
「君、今日の会見はどのくらい集まりそうかね?」
「そうですね、3名です。想定の範囲です。」
 
と自信たっぷりに回答すれば、社長はちょっと訝しげに思いながらも「まぁ、そういうものか。」と納得してくれるものです。
 
*そんなばかな、と思うなかれ。物事は想定してコミュニケーションをとれるかどうかで反応は変わってくるのです。間違っても、「おかしいな、今日は少ないですね。」等と言ってはいけません。明日のあなたのポジションを守りたいのなら。
 
さて、こうした想定をどのレベルに置くのかという事前のコミュニケーションをすっとばして、いきなり社長とともに会見場に臨んだらどうなるでしょう。広すぎる会場に記者は3名。あいにく外は雨が降っています。そこで、社長に聞かれます。
 
社長「ずいぶん記者が少ないね。」
おっと、本当だ。100名は入る会場に3名とは。。。ほんとに3名か?イチ、ニ、サン。もう一度。イチ、ニ、サン。いや、何度数えても3名だ。
 
ふと窓の外をみると、降り注ぐ大粒の雨。もはやこれを使うしかない。
 
「はい今日は雨ですし、、、」
 
記者の皆さんをばかにしてはいけませんよ。
 
雨か晴れかで記者の人たちの集まりが変わるですって?
じゃぁ、今彼らはいったいどこで何をしているというのでしょうか。まさか、晴耕雨読、あるいは大きな葉っぱの下で雨宿りをしているとでも?
 
そんなわけない。
 
雨が降ろうが槍が降ろうが、彼らは仕事をします。必要ならばどこへだって、何時だって出向きます。記者の皆さん、そうですよね?
 
なので、「雨が降っているから集まりが悪い」ということは文学的ではありますが、論理的ではありません。そして最も気をつけなければならないのは、社長はそれを見抜く、ということです。日々厳しいビジネスと対峙している社長からすれば、
 
自分が少ないと思ったことに対する広報担当の見解が雨のせいだって?それじゃまるで販売が不振なのをマクロ経済のせいにする出来の悪い営業と一緒じゃないか。環境が悪いのならしっかり戦略を練ってそれを実行し、たとえ失敗しても検証を重ね、腕を磨き、次につなげるのがプロだろう。何をお天道様のせいにしているのだ。
 
*マクロが悪すぎると、売れないものは売れません。ちょっと言い過ぎかも。申し訳ありません。
 
と多くの場合、よい印象を与えることはできません。
万が一、その社長さんが「ほぉ、天気が悪いと記者は来ないのか。そういうものか。」と納得したら、これはこれで危険です。あなた自身が、記者の仕事を軽んじて、社長にそれを印象づけることになりかねません。そうすると、社長は必然的にマスコミ対応の優先順位を下げて、広報活動に今後は非協力的になる可能性すらあります。それは、広報部門に取って幸せなことではありませんので、一層の注意が必要です。
 
つまり、
社長「ずいぶん記者が少ないね。」
あなた「はい今日は雨ですし、、、」
 
このやり取りをした広報担当は、死亡フラグが立つことになります。明日のポジションの心配をするべきです。明日のポジションに影響がなかったとしたらそれは幸運な出来事で、周囲に感謝すべきでしょう。そして、こうした対話をしてしまったことをおおいに反省し、明日の糧にしていってほしいと思います。
 
Happy記者会見!
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*広報会議2013年新年号より
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