それはイノベーションか、リスクか--PR2.0について受けた質問
社内で真剣にコミュニケーションについて日々あれこれ考えている、あるとっても優秀な仲間から質問を受けました。「これだけオープンにブログとかやっていて、なにかあった場合にはどうするのか。」
いい質問です。そして、それは、私たちのメッセージを伝える絶好の機会となりました。
脱線しますが、質問を受ける、ということは、自分のメッセージを伝える絶好のチャンスなのです。
コミュニケーションをインタラクティブにする挑戦にはリスクがつき物です。私も実名でこうした場面に出ているわけですから、当然個人情報の積極的な提供、という観点ではリスクも介在するでしょう。しかしよく考えてみると、延べ13年超、この広報という仕事に私自身携わっている故、ニュースリリースのあちこちには、連絡先として私の名前が書かれています。つまり、私のことは常に知ろうと思えば知りうる状況にあるわけで、いまさら、隠れようなんて、そんなことは不可能なのです。そのような自覚があるのですね。おそらく同僚のWakiさんや、同じオルタナブロガーの面々も同じだと思うのです。
重要なのは、なにか情報発信をした場合に、それがポジティブであろうと、ネガティブであろうと、ニュートラルであろうと、まずは認知し、受止め、自身のメッセージや、主張をクリアに発信して、場合によっては相手の理解に働きかけることだと思うのです。一方通行の発信主義にすることなく、受信(到達)主義を重んじて、可能な限り、インタラクティブにコミュニケーションを行うことで、何がよくて、何が問題なのかが明らかになっていくのだと。その明らかになったことが、次のイノベーションに欠かせない財産になるのだと考えているのです。
PR2.0を勉強し、その学んだことや、実現性について第三者に問いかけると、必ず「あぶない」、とおっしゃる方がいます。リスクがあるという意味で、そのご指摘は間違いではありません。しかし、世代の後ろを振り返ってみると、デジタルネイティブといわれる10-20代の若い世代が社会人になり、あと数年もしたら中堅社員として活躍をしてきます。彼らは私とはまったく異なるプロトコルでコミュニケーションを行うのです。当たり前のように、電話や、面談と同じ水準でデジタルメディアやWebサービスを使いこなす彼らがビジネスの中核になってくるとしたら、その潮流を無視することができるでしょうか。
恐縮をしつつ、著名な栗原潔さんが2007年6月に書かれた記事中の、Enterprise2.0を提唱したアンドリューマカフィ氏の言葉が、大変印象的なので、ここで引用をさせていただきます。
現実のVerbal Communicationでは、例えば月曜日に出社すると、週末のゴルフの結果や、テレビの話や、前日のニュースやゴシップについて話に花を咲かせることはあるでしょう。つまり、2.0のアプローチは、日常の会話となんら隔たりなく、ただその会話が、拡がり、増えて、繋がっていくだけなのです。YouTubeを見たり、ブログを書いたりすることについて、それはいったいどういうことなのか、今一度思考をめぐらせてみるチャンスを創ってみるのはいかがでしょう。
さて、長々と書いていますが、もし、2.0アプローチを試みたくなったときに、私たちがしなくてはならにことはなにか。それは、次のことを自分や仲間に積極的に問いかけ、なければ創ることなのです。
- ガイドラインはあるか
- 情報発信者は、その道のプロか
- 責任と覚悟は共有されているか
・・・・・・・・・・・その意味は、つまり、
- ガイドラインがなければ無法地帯になるリスクを放置することになります。禁止するのではなく、どうすればできるのかを明確にすることです。しかし、そのハードルをむやみにあげるのは得策ではありません。なぜなら、ハードルが上がった時点で、周囲は”やってはいけないんだ”というクウキを勝手に作ってしまうからです。
- どんな分野でも、その道に詳しい人が情報発信をすることが望ましいという考え方です。その道、または、すべての道に詳しくない方が、情報発信をすることは、チャンスではなく、リスクを増大させます。もしプロフェッショナルがいない場合にはそれ自身を創ることを検討する必要があります。
- 無責任な情報発信は、リスクの源です。事実に基づかない発言は、あらゆるリスクを増大させるばかりです。必ず、発言に責任を持ち、そして、イノベーションにはリスクがあるのだという、覚悟を決める、そういうところからこそイノベーションは始まるのだと考察しています。
また、時代がそのような潮流である以上、コミュニケーションが変化していくのは不可避の現実だという見方です。必然ならば、きちんと流れに乗ることも必要なのではないか。環境が変化しているのに何もしないで待っているのは、あまり面白くないですから。
*許認可事業体の場合は、監督官庁の指導、法令、制度などによる制限があるため、上記のことは必ずしも当てはまりません。ごく一般的な民間企業や個人に当てはめて読み取って下されば幸いです。
*本内容は事実に即しながら、個人的な見解を含めて記述しております。日本オラクルを代表をしての記事ではありません。予めご了承ください。
*参考文献:ゲイリーハメル著「経営の未来」、田中克己著「IT産業崩壊の危機」、クレイトンクリステンセン著「イノベーションのジレンマ」、日経コンピュータ2008年6月1日号