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「失敗が悪」から「失敗しないが悪?」の時代へ

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「失敗が悪」から「失敗しないが悪?」の時代へ

(更に先のブログのつづきです)

小中学校で習った国語の科目の中で、大嫌いなことが2つあります。

一つは、「自然」の反対は「人工」
もう一つは、「成功」の反対は「失敗」

です。これは、どちらも うそ ですね。
後者について考えたいと思います。

最先端の科学(研究開発)の世界は、常に試行錯誤の連続です。
たとえ、1回たまたま成功したとしても、
次にはその再現性が問われます。

その再現性が問われた後は、
今度は、別の角度からの検証を行います。

更に、「いつ」「どこ」「誰」というファクターに
依存せずに、再現するかが問われます。

それで、ようやく科学になります。

従って、先の日本人のノーベル物理学賞の
小林・益川先生が論文を発表してから受賞までに、
30年以上もの年月を要するわけです。

なので、ビジネスの世界で、「法則」なんて
言葉が使われることには、強い違和感を覚えます。

お隣で、一日に、アンパンが1000個売れるとしても、
自分の家で同じようにアンパンをつくっても、
1000個売れないですよね。

さらに、今日、アンパンが1000個売れても、
明日も1000個売れる保証はどこにもありませんよね。

従って、ビジネスの世界に法則はありえません。
ありえるとすれば、
残るのはマインドくらいのものでしょうか。 

法則とかノウハウとかいう言葉を使われる時には
ほとんど成功例しか示されず、失敗例が全然ないのか、
あるとすれば、その割合はどうなのかも示されないと
信憑性がありません。


「成功」の反対が「失敗」ということの他に、
「失敗は成功の元」という相反する言葉もありますね。
失敗すればするほど、成功にどんどん近づくわけです。
成功してないと思ったら、
それは、ひとえに、失敗が足りない
のだと思います。

実際には、「成功」の反対は、「失敗」ではなく、
「成功」の反対は、「何もしない」 ですね。

我々は、子供の時から、「失敗は悪、間違いは悪」という
教育を常に受けてきましたし、そう信じてきました。

ところが、ビジネスの世界でも、最先端になると、
科学の世界と同じで、試行錯誤の連続なわけです。
答えなんて、わからないので、最初から正解は
原理的にありえません。
つまり、どんどん失敗をしないといけないわけで、
リスクを取る という意味にも通じると思います。

逆に、たまたまうまく行ってしまうと
疑いたくなります。何か見落としているのではないかと。

自分の場合は、不動産を通してなんとなく実感できます。
一方、1人で、try & error を実践できるので、
大家さんは、身軽な経営者だという面もあります。

ではなぜ、「失敗は悪」という文化が根付いて
しまっているのでしょうか。

それは、既に確立されたことについて習って、
それを教わった通り実践する場合、
失敗したら悪になるわけです。

生徒が学校で教わったこと、
サラリーマンが会社で教わったことを
そのまま実行する場合に相当します。

つまり、「失敗が悪」という立場の人が
多いからだと思います。

一方で、経営者は、次の新たなビジネスを
考えていかなければいけない立場にいるわけで、
サラリーマンとは正反対の資質が要求されます。

つまり、ひたすら、試行錯誤を繰り返し、
ビジネスを構築していく必要があります。
既存の収益システムが破綻する前に。

逆に言えば、
うまく収益が回っているシステムは
人任せにできるわけです。
そのシステムの中で生きているのが
サラリーマンですね。

ただ、サラリーマンがその立場から脱却し、
先のプログで述べた「時間」と「労働力」以外の
要素を新たに見つけようとすると、
積極的にリスクを取り、失敗をしていかないと
いけないことを意味します。

なので、「失敗が悪」ではばく、
「失敗しないが悪」
ということになるわけです。

もちろん、最初は、小さく失敗することが
肝要です。

このことは、研究開発の世界で、
まず、プロトタイプを作って試すということにも
通じます。

日本という国は、どうも
失敗について寛容でない
という面があると思いますが、
それは、サラリーマンの多さにも
依存していると思っています。

もう一つ、最先端の世界は、
政治の世界です。

政治の世界の難しさは、
最先端であるにもかかわらず、
試行錯誤をしずらいことです。

今回の米軍基地の問題もそうですね。

おそらく、どの人が首相になったとしても、
鳩山首相と同じような結論になってしまうのではと
思うのですがどうでしょうか?

日米関係、国際関係、様々な要因を
高いところから眺めて、考慮してもなお、
思い切った政策を取れるなら、
是非、その方に首相をお願いしたいです。

誰になんと言われても、政権を取っている間は
ご自身の信念を貫いていただきたいです。

選んだ方の責任でもあると思います。

後だしジャンケンのような批判はいくらでも
できますから。

失敗に対して寛容になること
日本という国の将来を考える時に
重要な資質の一つだと思っています。

「うまくいった、いかない」は、一朝一夕には判断できませんね。

時間軸についての考えは、また書きたいと思います。

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