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ライフワークとしての学びを考えます。

「先生」と呼ばれて喜んでいるうちは大局観など身につかない

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「大局観を身につけろ」

とよく言われます。

大局観を持っていれば、人生ももっと良い方向に向かっていたのではないかと思うこともしばしばです。

しかし、目の前にある物事に追われ、なかなか大局観を身につけようという意識は起こりません。近視眼的に物事を見て右往左往、一喜一憂し、いつのまにか時間が経過しているというのが現実です。

それでは、どうしたら大局観を持つことができるのでしょうか?

通常は、今ある現実に対して思考停止してしまいがちです。なぜ、思考が変わらないのでしょうか?それは、現場にどっぷりつかっていると全体が見えなくなってしまうのです。

そこで、あえて空間をとることが必要だと思います。

「日経ビジネス」2015年3月23日No.1784に、ライフネット生命保険CEO出口治明さんのコラム「賢人の警鐘」に、大局観を持つための空間をとる方法が書いてありました。

    ・・・・(以下引用)・・・・

全く違う業種の人にどう見えるのか聞いてみたりすると、新たな「空間」の視点が生まれる。地上に住んでいると地球の美しさをなかなか実感できないが、宇宙から地球を見た宇宙飛行士はほぼ全員が、地球の美しさに一番感嘆している。地球を離れてみて全体としての美しさを知ったのだ。

(中略)

今悩んでいることについて空間的距離を置いて考えるには、唐の太宗が魏徴を登用して諫言させたように、自分のことをボロクソに言う部下をそばに置くのが一番いい。そうした日々の積み重ねの中で、予測不能な現代社会を生き抜くための大局観が、少しずつ得られるのではないだろうか。

    ・・・・(以上引用)・・・・


他人の意見を聞いてみることです。
ビジネスで言うと、仲間やお客様に聞いてみることが大事なのではないかと思えます。

そういうとき邪魔をするのが、プライド(エゴ)です。

「そうか、人の言うことを聞けばいいんだな」と思っても、簡単にはいきません。人は生きている限りエゴをなくすことはできないからです。厳しく「本当のこと」を言われれば言われるほどエゴは反発します。

2010年11月1日の記事、「『悪い知らせを伝えた部下を"斬る"上司』強い批判を受け入れる準備はできているか?」にも書きましたが、「上司のピンチを救うため、良かれと思って本当のことを伝えた部下は斬られる、だから伝える前に次の転職先を探しておけ」という話です。

人は年齢を重ねれば重ねるほど、本当のことを厳しく言ってくれる人は減っていきます。
周囲から「先生」などと言われるようになると、ますます危なくなっていきます。
「一般人」と「先生」というバウンダリーをもうけてしまうからです。

2012年9月5日の記事、「私を先生と呼ばないでください」にも書きましたが、人は、ある程度指導者としての立場ともなれば「先生」と呼ばれることも出てくることもあると思います。しかし、そこに、いつも一つの違和感を感じていることが大切ではないでしょうか。まさに、自分自身の問題として深く問い続けていかなくてはならないと思っています。


ただ、発想の転換ができれば、「ちょっと辛いが言われるのも悪くない」と思えるようになります。

それは出口さんも書いておられますが「地球の美しさを知ること」。

私は、「合唱チームビルディング」という、企業チームビルディングを行っています。音楽のハーモニーを作る上でバウンダリーをはずしていくことが良いハーモニーを作る上で大事なことです。
ハーモニーを作るという大前提で、上下関係や部門を超えて意見を述べ合い、全体の響きが良くなってくることを実体験していただくのです。

ハーモニー全体の美しさは「地球の美しさ」と似ています。

ハーモニーづくりの場において仕事の疑似体験をしたいただくことで、行った直後から、組織全体のコミュニケーションが加速化していきます。

大局観を身につけるべきはトップだけではありません。
職場の一人一人が、お互いに大局観を身につけ始めるようになると、組織全体も良くなっていくのです。

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