「10人いたら自分のことが大嫌いな人が3人いる」 加減することで上手くいく3つの方法
仕事においても、人間関係においても、自分の感情においても、「加減が大事」。
私はそれを、もとメジャーリーガー・ピッチャーで、投手コーチの吉井理人さんの本「投手論」を読んで教わりました。その加減法を「自分」「他者」「集団」と大きく3つにまとめてみました。
(以下「」の部分は要約して引用させていただきました)
1、自分の加減
「ストレートには3種類あり、それは球種ではなく力の入れ加減。試合で100%の全力投球は1~2球だけ。80%、これが最も力が出せる状態。時として75%で投げることもある。5%下げるのは本人しか分からない感覚である。」
なぜ100%にしないのか?
「試合に入るとアドレナリンが分泌される。アドレナリンによってプラスされる効果は20%。だからもし100%の投げ方が身に付くと、試合で120%のオーバーワークになる。だから、普段の練習からベストの力加減、80%はこんなもんだと、自分の体に教えておくこと。」
「棒高跳び世界新記録のエレーナ・イシンバエワは、練習では世界新には挑戦しない。『確実に跳べる高さを毎日繰り返して練習するだけ。試合に行くとあとは不思議な力とアドレナリンが出て、新記録を跳べるようになる』」
世界記録保持者でもそこまで考える。
そう、以前の記事「「なぜ緊張してしまうの?」 でも緊張して良いのです」にも書きましたが、プレゼンやスピーチ、演奏でも、本番で緊張してもよい。その緊張こそアドレナリンが出ている証拠だからです。練習で体に80%を覚えさせ、最後は緊張をコントロールし、味方につけるのです。
2、他者の加減
「調子の良いところでスパッと代えて休ませ、次に備えさせる。そのほうが調子を崩さないで長丁場を乗り切ることができる。ギリギリまで引っ張ってピンチを作り苦しむというのはコーチとしてはやってはいけないこと。ピンチを乗り切って全力を出し切ると、満足感はあるが「よっしゃ、やった!」と気持ちが昂ぶるため、その気持ちを一旦下げさせて、次に盛り上げていくのに新たなエネルギーが必要になる。」
吉井さんは、「できるだけスマートに汗もかかずに交代させるのが理想」と言います。
名指揮者は、オーケストラに常に全力を要求しません。なんとリハーサルで楽団員に全力を出させてしまう指揮者がいますが本番が難しくなります。力の加減をコントロールさせることが名指導者や素晴らしいリーダーの資質なのでしょう。
3、集団の加減
「10人の選手がいたら3人は俺のことが好きな選手がいる。3人は大嫌いな人がいる。残りの4人は、監督のことなどどうでもいいと思っているだろうが、そのどうでもいい選手が大嫌いに引き込まれないように注意してみておくのが、チームをまとめる最善の方法だ」
と、ボビー・バレンタイン監督が言っていたことばが紹介されていました。
「嫌いな選手にも配慮しすぎると失敗する事が多くなる。監督やコーチというのは孤独なため選手全員から支持を得たいと考えてしまいがちなのを、あえてコントロールし合理的な考え方をする。そうすることで、ローテーションなども迷いがなくなり、そして選手が失敗しても動じることなく貫きとおすことができるようになる。それが、最終的に勝利につながるのだ」と言います。
人は好き嫌いだけではなく、このリーダーとはなんとなくソリがあわないという場合があります。バレンタインさんはそのような方のことをおっしゃっているのだと思います。私は、もしかしたら自分のことが嫌いな人がいるかもしれませんが、あまり気にしないようにし、人との関係はできるだけ平等に、そして和解しようとしています。未熟で上手くいかないことも少なからずありますが、人は自分の鏡、いつかは良好な関係になってくれるのではないでしょうか。
手加減すると言うと、手抜きをしているというような悪い意味に解釈されることが多いが、加減することが真剣勝負していないことにはならない。”真剣勝負”と”加減”は同レベルに存在する。
そう感じました。
吉井さん、素晴らしい本を有り難うございます。