「なぜ緊張してしまうの?」 でも緊張して良いのです
演奏会や人前で話すとき、結構緊張してしまいます。
何度経験してもやっぱり緊張する。
未だにあまり慣れないような気がしています。
しかし、たまにですが「なんだか今日は緊張せずに、リラックスして出来そうだ。」と思った本番・・・・。
大抵は思ったほど上手くいかないのです。
なぜなのか不思議に思っていました。
「緊張する」とは一体どういうことなのか。
人間が緊張するとアドレナリンというホルモンが出て交感神経を興奮させるため、呼吸が多くなり、血圧が上がって、食欲も出なくなる状態になります。
人類の昔から、緊張状態というのは、戦うために必要なエネルギーを集中させる反応なのだそうです。敵(人間や獣)が現れたとき、酸素をたくさん送り込み、消化活動を停止しエネルギーを重要な器官に集め、血管を収縮し、攻撃されたとき出血量を抑えるという働きがあります。
また、緊張すると脳波は緊張を示すβ波になり、意識は分散し、考えなくてもいいような雑多なことが頭に浮かびますが、こうなることで、どの方向からの攻撃にも対応でき、あらゆる戦闘方法の対応策を瞬時に探り、選択することが可能になるそうです。
食欲が落ちたり、手が冷たくなったり、落ち着きがなくなるのはそのせいなのですね。やっと分かりました。
つまり緊張するということは、人間が生き残るために戦闘態勢に入ったことを意味するのです。
生きるか死ぬかギリギリのところで能力以上のものを引き出そうとする生命の知恵なのかもしれません。
それが分かってから、緊張してきてもあまり慌てなくなりました。
「スイッチが入ってきたな。準備は段取り良く進んでいる。」と思います。
そして緊張するのは自分だけではありません。
出演前にトイレの中で、緊張とミスへの不安に恐れおののいているといわれる、ピアニスト、マルタ・アルゲリッチ。
「もうだめだ」「やめたい」と言っていやがり、奥さんが背中を押して舞台に出る名テノール、マリオ・デル・モナコ。
本番前にとてもナーバスになるキャンセル魔、天才指揮者カルロス・クライバー。
イチロー選手も「毎試合スタジアムでは脈があがります。プレッシャーはありますね。」と言っています。
だからこそ、いつも同じ行動をして成功パターンを体に覚えこませているのでしょう。
私が心がけていることは、緊張したときに、一体自分がどんな感じになるか、分かっていること。集中しようと無理をして自分を追い込まないこと。必要以上に慌てず状態を受け入れること。
それと、何でも良いので、「これをすると気分が良い」、または「これをすると上手くいく」ということを一つ以上する。
そうすると緊張しすぎずに、ベストな状態に近づくような気がします。
徹底した準備は必要だと思いますが、それに加えて、いつも以上のパフォーマンスを発揮するために緊張することは大切なことだったのですね。