世界の小澤征爾さん そのルーツは合唱にある
世界的指揮者の小澤征爾さん。
そのルーツはオーケストラではなく合唱にあった、と言ったら意外に思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。
放送タレントでエッセイストでもある弟さんの小澤幹雄さんのエッセイが、「ハーモニー」153号に掲載されていましたのでご紹介します。
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小田急線で2時間もかかる世田谷の成城学園中学校に入った征爾は、高校OB男声合唱団「コール・カステロ」に入れてもらい、ロシア民謡や黒人霊歌を歌っていた。征爾は「指揮によって音楽が変わる」のを初めて経験し、自分でも振ってみたくなったのか僕が入学した時中学の仲間に呼びかけて小さいコーラスグループを作り、僕も勿論参加した。征爾はそこで生まれて初めて「指揮」をしたのである。合唱団は「城の音」と名乗るようになった。
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「指揮によって音楽が変わる」
これはプロのオーケストラでもアマチュアの団体でも同じことです。
技術もさることながら、どんな人間が立つか。
ベルリン・フィルが客演指揮者のリハーサル中、ホール客席に立っただけで音が本番さながらの深い音色に変わってしまったフルトヴェングラー。
指揮者は実際音を出すわけではないのですが、これこそ「指揮の真実」なのです。
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桐朋学園に入り斎藤秀雄先生に指揮の指導を受けるようになっても、征爾は我々の練習に来てくれて、貨物船でフランス留学するまでそれは続いた。実は「城の音」は今でもしぶとく歌い続けていて、毎年クリスマスになると学園内で内輪のコンサートをやるが、征爾は必ず駆けつけてきて一緒に歌ったり指揮したりしている。02年正月ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートを振りに行く時も我々のクリスマスを振ってからあわただしくウィーンに発って行った。
「生きた化石合唱団」「自己満足グループ」といわれながら、来年の創立60周年に向けて「城の音」は歌い続けている。
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超多忙な中、ご自分のルーツを大切になさる小澤さんのお人柄が良く表れているエピソードですね。
小澤さんの著書「ボクの音楽武者修行」にもこの「城の音」について愛情を持って書かれていました。
しかし、内輪だけとはいえ、なんとも贅沢なコンサート。
本当にうらやましいです。
毎年、年末か年始に日本で人間ドックを受けておられると聞いていましたので、そのおかげで今回のご病気の早期発見があったのかもしれませんね。
またお元気な指揮姿を拝見したいと願っています。
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