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左利きがうらやましくなるとき

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昔から、どちらかというと右利きの作曲家とピアニストが多かったせいか、左手克服のための練習曲が多く存在します。
 
有名なショパン(1810年~1849年)の「革命のエチュード」はズバリ左手のための練習曲です。
 
ショパンは、その優男的容姿もあいまって、当時はアイドル並みの人気ピアニストであり、作曲家でもありました。
自分の腕が落ちないように、作品10、作品25の全24曲の練習曲を作曲しています。
 
練習曲と言うと、ツェルニーやハノンのような無機的な曲を思い浮かべてしまいますが、ショパンの場合は、大変芸術的な内容の曲ばかりで、「革命」の他には「別れの曲」「黒鍵」「木枯らし」など、1曲1曲が珠玉の名品。
現在でもピアニストにとっての牙城となっています。
 
同じ時代を生きたライバル、サロンの寵児フランツ・リストに献呈された作品10は、リストに対する挑戦状のような気迫に満ちた内容となっており、その最終曲が「革命のエチュード」なのです。
 
祖国ポーランドの革命が失敗に終わり故郷のワルシャワが陥落したとの知らせをきいて作曲されたもの。
猛然と縦横無尽に鍵盤上を駆け回る左手のパッセージが、祖国を思うショパンの胸をかきむしられるような心を表現しています。
しかし、2分30秒休むことなく繰り返される強烈な左手は、右利きピアニストにとって大変な練習曲であることに変わりありません。
 
18世紀に活動したドイツの作曲家で、音楽の父と言われたJ.S.バッハ(1685年~1750年)は、左利きだったのではないか?と言われています。
 
彼の曲は「右はメロディ、左は伴奏」という形よりは、「右手左手両方がメロディ」というように書かれています。
 
特に、ピアノの旧約聖書と言われているバッハ作曲「平均率クラヴィーア曲集」はピアニストが必ず勉強しなければならない曲集。
あたかもメロディを歌う人が一人、二人、三人、四人・・・・とだんだん増えていくように演奏する「フーガ」は、二つの手で全てを弾き分けることが必要で、左手も右手同様に動かなくてはなりません。
「左利きだったらなあ・・・」とついついボヤいてしまいます。
 
科学的な実験を行った結果、バッハを弾くときの脳は、左手をつかさどる右脳が活発に反応するそうです。
 
バッハを得意としていたピアニスト、グレン・グールドも左利きだった、と言うのを聞いて大いに納得しました。
 
本日はグレン・グールドのピアノで、バッハの「ゴールドベルグ変奏曲」より、を聴いてみることにいたしましょう。

 
 
グールドは、録音以外のライブでの演奏活動はあまりしなかった完璧主義者。
このゴールドベルグ変奏曲は、衝撃のデビュー盤以来2度目の録音です。
この録音後、グールドは亡くなるのですが、長い長い曲の最後に、万感の想いをこめてもう一度最初のテーマが演奏されるのです。
この曲のような人生だったのではないかと思います。
 
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