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スティーブ・ジョブスは心をつかむリリックなテノール 5つの演奏法(その2)

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前回の記事では「1、リリック・テノール」「2、アルシスとテイシス」までを書きました。
 
3、生きた休符
 
ジョブスのスピーチは間の取り方が素晴らしいと思います。
 
短くもなく、長くもなく、フレーズとフレーズをつなぐにあたって、内容に合わせてとても自然な休符が存在します。
しかも、行き当たりばったりではなく、最初から計画しているところがあるように思います。
 
休符といっても本当に休んでいるわけではありません。
身体は表現している状態のまま。
 
合唱の練習でも、休符があると「もう、すぐに休もうとする!ほらっ、休符でお茶飲まないで!」とよく注意を受けていますが、ジョブスの休符は意味があり、生きた休符なのです。
聴衆が期待をふくらませ、緊張で「ごくり」とするところなど、ちょうど良い間を取っていますね。
 
ジョブスは相手が何を期待しているのか知り尽くしており、生きた休符によって聴衆を引きつけているのです。
 
 
4、モティーフの連続
 
作曲家も曲を書くとき、重要なモティーフは連続して繰り返します。
『運命』の「ダダダダーン!」のモティーフもクライマックスでは「ダダダダッ!、ダダダダッ!・・・・」とこれでもかこれでもかとたたみかけ、強烈に印象づけられます。
 
ジョブスの場合も、ここぞというときに重要なキーワードを繰り返し言うようにしているようです。
 
それでは「ここぞ」とはどこなのでしょうか。
 
以前師事したイギリス人の先生からこう言われたことがあります。
 
「あなたの演奏はキングがいくつもありますね。
チェスのキングは一つだから価値があって強いのです。
曲の中でキングはどこかわかりますね?
そこを一つに決めなさい。
それから他の駒をどこに配置するか、全体の構成を考えなさい」
 
ジョブスはクライマックスをどこか決めています。
そして、全てはそこへ向かって進行します。
 
言いたいことを全て言ってしまうのではなく、キング以外はかなり内容をシェイプアップし、言葉を吟味しています。
一見物足りないと思われるくらいのシンプルなパワーポイントを見るだけで、いかに考え抜かれているかが良く分かります
 
素質に恵まれ、最高の準備をしても、最後は心だと思います。
大変感受性に優れた方のようで、いつもドラマティックで心に残る言葉を用意していますね。
 
そういう言葉を、まったく照れずに、堂々と、一回ずつ気持ちを入れなおして繰り返しています。
言葉に魂が入っているので、繰り返すことにより飽きてきて内容が弱くなることがありません
 
 
5、自分のテンポをくずさない

クラッシックの演奏家は、曲を演奏している間、何があっても自分のテンポ、自分のスタイルを守り抜きます。

一曲終わるごとにある拍手や、演奏中に届く聴衆の気は、演奏家をさらに良い演奏に導き、聴衆がさらに幸せになり、ホール全体に良い循環をもたらす、ということはあっても、寝ているお客さんや雑音にムッとしたり、その日の客層に調子を合わせて即興的にスタイルを変えることはありません。

そのために、時間をかけて準備し、綿密なゲネプロを行うのです。

ジョブスのプレゼンは演奏家スタイルだと思います。

聴衆が笑っていても、真剣そのもの。何者にも影響されることがありません。
澄んだ瞳でにこりともせず、禊を終えた修行僧のように凛した空気を漂わせながら、しかし穏やかな表情を浮かべているのです。
 
嘘のない、全くブレない人物なのだということが感じられます。

彼のプレゼン、今でこそ絶賛されていますが、もし罵倒されたり、野次がとんだりしても、きっと流れを変えることはないと思います。
 
 
ジョブスは現在世界最高の経営者であり、アーティストでもあるのだと思います。
 
つい最近メディアに登場して、お元気そうでしたので安心しました。
 
これからもAmazingな作品を世の中に送り出していただき、その作品を手にとることで、海の向こうにいるジョブスと喜びを分かち合っていきたいですね。

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