LoRaWANどこまで届く?富士山から123km達成!
12/26(火)は筑波大学で教職員、学生の方々を対象に、柏の葉IoTハッカソンの説明とLoRaWAN™の技術セミナーを開催させていただきました。グローバルでオープンなIoT向けの通信規格であるLoRaWANに興味を持っていただいたようで、ハンズオンと共に、活発な質問も飛び交い、大変好評でした。
そのLoRaWANですが、低消費電力で遠くまで飛ぶと言われています。では、いったいどこまで飛ぶんでしょうか?
よく聞かれるのは「そんなに飛ぶのは無線の出力が大きい(強い)のですか?」と聞かれますが、LoRaWANが使う920MHz帯(いわゆるISMバンド)の電波送信は日本では電波法により13dBm(約20mW)の送信電力制限があり、これ以上の出力は認められていません。なので出力が大きいから遠くまで飛ぶのではなく、LoRaWANが採用している『LoRa変調方式』という無線方式が、電波が遠くまで飛ぶ仕組みがあるから、となります。こちらの技術的なお話しはまたの機会にさせていただきまして、障害物がない、見通しさえ確保できればかなり遠くまで飛ぶ、100km以上でも届くはずですよって答えていました。
ここで、電波の見通し距離の計算をしてみましょう。電波の見通し距離は幾何学的見通し距離に等価地球半径係数をかけることで求めることができます。
上記の式で、例えば、アンテナの高さ 64m、測定を地上高 1m で計算すると、37.08km になります。
逆算で、100km を代入してアンテナ高さ 64m くらいで計算すると 264.71m と出てきます。柏の葉から100kmだと箱根山あたりがいいんじゃないか?と思って調べたのですが、LoRaWANの基地局がある柏の葉方面が開けていて見通し良く測定できるかどうか、Webから調べただけではわかりません。
とりあえず、柏の葉から遠い高層ビルに上ってみようと横浜に行ってみました。
はい、横浜ランドマークタワー、73階建て、高さ296mです。
遠くまでよ~く見通せます。地図ソフトで柏の葉の方向はこっち!と見定めて、測定、測定。家族連れの人達の視線が痛いですが、気にしません!
届きました~! 柏の葉キャンパスから横浜ランドマークタワーまで 56.81km 、これはなかなかの記録です。測定ログを見ると受信強度(RSSI)は -111~-119dBm 、S/R比(SNR)は -8.5~-13.5 で推移していて、受信成功の確率は大体50%くらいでした。ちなみに296mのランドマークタワーの電波の見通し距離は先ほどの式で計算すると70kmにもなります。
これはやはり100km越えをやってみたい!と思い立ち、やってきましたバスタ新宿。
高速バスで富士山五合目に向かいます。
富士山五合目行の直行バスは満席!各席にUSB充電端子があり、トイレも付いてるので快適です。
やって来ました。富士山五合目、観光客でいっぱいでした。
到着して、そそくさと測定開始です。
スマフォの地図ソフトで柏の葉キャンパスの方向を確認!(クリックで拡大して確認できます)
濃い霧で覆われていて、柏の葉キャンパス方面はまったく見えません!でも一方的に開けていて、間に何もないのは間違いない!(笑)
届きました~! 柏の葉キャンパスから富士山五合目まで123.43km、これは LoRaWANとしては国内最高記録ではないでしょうか? 測定ログを見ると、受信強度(RSSI)は -115~-117dBm 、S/R比(SNR)は -13~-14.8 で推移していて、受信成功の確率は大体25%くらいでした。ちなみに、富士スバルラインの富士山五合目の標高は2305mだそうです。先ほどの式に入れると電波の見通し距離は197.8kmにも達します。
ということで「LoRaWANは見通しさえ良ければ 100km 越えても届く!」を実証することができました。目的を達成したので、富士山五合目から頂上登山を目指す観光客の方々を見送り、一歩も登らずに、五合目滞在わずか1時間で戻りのバスに乗り込みました(笑)