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クラウドの理想はパブリックだけかハイブリッドか

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 ゴールデンウィーク中の3日からEMC Worldの取材でラスベガスに来ている。日頃、国内ではEMCの発表会の取材もしているが、米国でのEMCの大きなイベントを取材するのは始めて。

 いまやEMCもたくさんの製品ポートフォリオがあり、継続して追いかけていないとキャッチアップが大変だ。その上、今回いくつかの新製品、ニューバージョンの発表もありちょっと頭は混乱気味。

 大きくは、まずはストレージなどを中心としたインフラ系の話、そして先日日本でも発表していたVMware、Pivotal、RSAという組織とのFederationによる動き、そしてEMCがエマージングと位置づけている第三のプラットフォームの世界の話という3つに分けることができる。

 インフラのところは、旧来のERPなどのアプリケーションを新しいクラウド的なテクノロジーを使って効率よくコストを下げて運用する世界が1つ。もう1つが第三のプラットフォームのモバイルやIoTなどのインフラとして柔軟性と拡張性のあるインフラとがある。ビッグデータという追い風もあり、このストレージを中心としたインフラの世界は好調のようだ。中でもオールフラッシュのXtremIOは、これまでのEMCの歴史の中でももっとも成長率の高い製品になっている。

 新たにFederationという形でで提供するのも、どちらかと言えば第三のプラットフォームの世界だ。ストレージだけでなくその上で動くアプリケーションを意識して環境を作る。その環境でモバイルアプリケーションなどを素早くアジャイルで開発し続けるサイクルを作る。そうすることで、最高な製品ではなく顧客の最高な体験を提供し続けることができる。

 この環境については、EMCがVCEでデータ保護を含むインフラを提供し、そのセキュリティをRSAの技術で実装する。VMwareはその上で仮想化を使って必要な柔軟性と拡張性を提供する。出来上がった環境の上では、PivotalのCloud FoundryのPaaSの技術で素早く開発し続け、得られるビッグデータを分析して適切な意思決定をするというのがEMC Federationというわけだ。

 EMC的にはこの環境の形はハイブリッドクラウドが正解だと言う。ハイブリッドクラウドはパブリッククラウドへ行くための途中ではなく、これからしばらく企業はハイブリッドクラウド使うことになるとも主張する。

 なぜなら、求められるSLAなりセキュリティなりが違うので、ものによってはオンプレミスのほうが効率的に安全に管理できるからというのがその理由。であるからして、ハイブリッドを効率的に運用できる環境をFederationで提供するのだ。このハイブリッドクラウドでは、クラウドからオンプレミス、オンプレミスからクラウドという双方向での柔軟な移行が必要となる。

 ハイブリッドクラウドというのは、多くのベンダーが主張するクラウドの理想像だ。おそらく、これから数年はパブリック、プライベート、オンプレミスが混在した環境を企業が利用するのは事実だろう。とはいえ、これが本当に理想像なのかには若干の疑問もある。いまあるパブリッククラウドの課題、サービスレベルやセキュリティ、移動にともなうネットワークの負荷やコストの問題などはやがては解決できるものなのではとも思う。最初からすべてをパブリッククラウドでという企業もすでにあり、そういった企業にとっては理想像はハイブリッドクラウドではなくパブリッククラウドだけだろう。

 実際、これからはハイブリッドクラウドだと主張している多くのベンダーにおいても、持っているすべてのソフトウェアやサービスなりをクラウド対応すると表明しているところは多い。彼らも全てがパブリックになる未来像を実は描いているのではないだろうか。とはいえ、しばらくの間は顧客がハイブリッドに向かう。なので、それを現時点の理想だと言っているのではないだろうか。そう考えると、ハイブリッドはやっぱり最終的なパブリックへ行く途中なのでは。

 まあ、そう考えてみたものの、クラウドが「パブリックだけで行ける時代」になる頃には、さらに新しいクラウドの概念が出ているかもしれない。そうなればパブリックだとかハイブリッドだとかのクラウドの形を、ユーザーが全く意識する必要がなくなっているのかもしれない。

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