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鳥のように高いところからの俯瞰はできませんが、ITのことをちょっと違った視線から

AIやWatsonの次にくるもの

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 機械学習や人工知能的なものが、IT業界では新たなブームになりつつある。自分が25年以上前にこの業界に入った際に、最初に携わったのがこのAIの世界。再びのブーム到来に、それなりにワクワクしている自分がいる。

 とはいえ自分の中には、25年以上の月日が経過したのにAIの世界は大きく変わっていないなぁとの印象がある。たしかに当時とはまるっきりコンピュータの性能が異なるので、大量なデータを使ってかなり賢いAIが実現できている。しかし、考え方の基本はあまり変わっていないのかなぁと思うところ。

 そしてここにきて、いわゆるノイマン型のコンピュータの限界的なものも感じるところもある。逆に、圧倒的なパワーと膨大なデータ量で、人間の脳を模倣するのではなくまったく新しい方向で賢いコンピュータが出てきたとも言えそうだ。それが機械学習で実現する世界やIBM Watsonのコグニティブコンピューティングの世界なのだろう。これは人間のように考えるというよりは、人間を越えた知識ベースを持って(一般の)人間よりも賢く振る舞うことができる。裏側には高度な統計解析やら数学モデルやらがあり、確度の高い「正解」を素早く導き出してくれる。

 この新しい賢いコンピュータの世界は、やっとのことで世の中で認知されるようになりビジネスの現場でも利用されるようになったばかりだ。これからさらなる進化を遂げ、より身近なシーンでも利用されるようになるのだろう。AIやらコグニティブやらをユーザーがまったく意識することはなく、じつはこのテクノロジーの裏側はそういうもので判断してますよというような家電やらサービスやらが、今後はどんどん増えて来るはずだ。そういえばその昔の家電では、制御にファジー理論が使われていますなんていうのが売りの製品もあったっけ。

 まだまだこれからの世界ではあるが、気が早いのでAIやWatsonの次なる世界に思いを馳せている。それで思いついたというか、あったらいいなと思っているのがネットの世界に放つ自律型のエージェントプログラムだ。現状のWatsonなりの賢いコンピュータは、性能の高いサーバーに置かれてそれなりの規模を持ったシステムとして稼動する。そのようなものとは異なり、このエージェントはごく小さいプログラムだ。ユーザーの要望を応えるためにインターネット世界をさまよい歩き、さまざまなデータやシステムとやり取りして答えを見つけ出してくれるもの。

 これは、賢い検索とは違う。あいまいな問いかけや、ぼんやりした要望にもさまざまなネット上の情報やシステムなりと会話し、判断して、なんらかの回答を持って帰ってきてくれるのだ。急いでいるからとすぐに答えを持ってきてくれる場合もあれば、難しい課題を与えられて数ヶ月間ネットの世界をさまよい歩くエージェントもいるかもしれない。

 ネットの世界をさまよい歩くためには小さいプログラムでなければならない。そして、さまざまなシステムと会話し判断しなければならないので、自律していて賢くなければならない。こんなことを飲み会の席で話していたら、とある企業の研究所のレベルではすでに似たような世界を研究しているのだとか。

 AIや機械学習が実用的になるまでに25年以上の月日が必要だった。この賢いエージェントプログラムの実現にはどれくらいの時間がいるのだろうか。これが実現できる頃まで、ITの業界で現役でいたいなぁと思うところだ。

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