雑誌をEPUBで電子化する
EPUB3.0も5月23日にIDPFが仕様を確定させた。とはいえ、まだこれに対応したリーダーがないので、新たな仕様は利用できない。
このもどかしい状況の中、雑誌のEPUBによる電子化の企画、制作に携わった。今回は『MUSICA』という音楽雑誌。これ、ガッツリとボリュームあるインタビュー記事で構成されている雑誌で、若い世代にかなりの人気があるもの。個性的なアーチストが続々と登場している。音楽雑誌とはいえ、かなり文字の量が多く読み物的要素が高いので、EPUB向きだなという判断があった。
とはいえ、やっぱりそこは雑誌、見開きで大胆に写真を使っていたりで、紙で作った際の構成イメージを、どこまで電子で表現できるかが課題だった。そしてもう1つがPCでの閲覧という要望。読者層が10代中心でまだまだiPhone/iPadなどの携帯端末を所有している状況にはない。ということで、PCでの閲覧を意識することになったのだ。そこで困ったのが、PCで利用できるEPUBリーダーだ。これだという決定版がなく、悩むことに。今回は結局、ブラウザのFirefoxアドオンの「EPUBReader」を推奨することに落ち着いた。GoogleなりSONYなりが、今後PCでも使いやすいEPUBリーダーソフトを出してくれればいいのになと思った次第。
雑誌の表現を踏襲するために行ったことは、背景処理や写真の掲載方法などに工夫を施した。工夫そのものはかなり難しいというものではないけれど、編集サイドの意図がどこにありそれをそのままではなくても電子に反映させるにはどうすればいいのか。写真と文章のアキであるとか、文章ごとの行間の調整であるとか、記事を構成する要素ごとの意味を考える必要があり、それを理解しながら細かいレベルで調整することになった。
もう1つ工夫したのが課金方法。当初は少額課金に向いたPayPalを採用しているが、これを使うにはクレジットカードが必要。クレジットカードはさすがに10代の若者向けではない。ということで、このあと随時、コンビニで購入できるプリペイ型の電子マネー「WebMoney」や、携帯電話の利用料と一緒に支払いができる「ドコモケータイ払い」などの若者でもすぐに利用できる課金方法を随時追加する予定だ。
電子書籍は、昨年の実体のないブーム的な流れから、ここ最近は現実的なビジネスの領域に入ってきたかなと感じている。とはいえ、いまはまさに過渡期で、何が正解で何をいまどうすればいいのかが、なかなか見えない部分も多い。あがきながらも、とにかく貪欲にやっていくしかないんだろうなぁと。