電子書籍のメリット、デメリット
先日、PRラボ( @PRLABO )という集まりの勉強会で、電子書籍をマーケティングで活用するにはというテーマで話をしてきた。勉強会は若手中心で、みんな前向きかつ柔軟な発想で感心することが多く、自分にとっても刺激となる勉強会だった。
その勉強会で使った資料に、電子書籍のメリット、デメリットというのを入れていた。その内容を今一度ここで整理しておくことに。
【メリット】
1.文字の大きさなど自由に変更できる
これはePubやKindleのMobi形式などの電子書籍が持っている機能の1つ。文字を大きくすることで、読みやすくなる。これらの電子書籍のフォーマットは、画面全体ではなく文字だけを大きくでき、文字の大きさによってページ繰りが変わりページ数も変動することに(これをリフローと言う)。通常はそれに合わせ目次や栞も動的に変化する(実際は、ビューワーアプリの機能に依存)。この機能のおかげで、老眼のため紙の書籍での読書を諦めていたような人も、再び読書が可能になるなどという事例も紹介されている。
2.検索機能やしおりで目的のページに瞬時にジャンプ
iPadのiBooksなどでは、テキストを選択すればその文字列ですぐに検索ができる。その書籍内で、その言葉が登場するところがリストアップされ、それを選べば該当ページへとジャンプできる。この検索機能があるおかげで、通常はePub形式の電子書籍などには、索引というものが存在しない。その他にも、GoogleやWikipediaとも連動して、書籍に登場した分からない単語の意味などをすぐに調べることができる。ビューワーを改造できれば、辞書や辞典アプリケーションなどとの連携も可能だろう。しおり機能は気になるところをマークしておき、あとからそのしおりのあるページにジャンプするという機能だ。通常、複数のしおりを設定することができる。ePubなど、ページがリフローで変動するような場合にも、通常はしおりがそのページの変動に追随する。
3.配送コスト、在庫管理の手間がない
電子書籍は電子的なファイルなので、配送手段としては各種電子書籍マーケットやWebサイトなどからダウンロードしたり、場合によってはメールに添付して配ったりすることが可能だ。物理的な紙の書籍と異なり郵送費は発生しないことになる。当然ながら、倉庫に保管して在庫を管理する手間もない。また、一度作成したあとでも改訂も容易で、在庫切れの心配もないのでロングテールな販売モデルを容易に実現できる。実際には、Webサイトや電子書籍マーケットの管理費用や使用料のようなものが発生するので、管理コストがゼロということはないが、郵送、倉庫管理に比較すれば大きなコスト削減が可能だ。たとえば、このメリットを活かせば、現在10,000部を紙で制作し印刷、郵送配布しているものを7,000部に減らし、部数が減った分の郵送費や印刷代コストで書籍の電子化が可能になるかもしれない。
4.言語の切り替えや読み上げ、動画の埋め込みなど多様な表現が可能
Kindleでは標準の機能であったり、場合によってはアプリケーションの機能として作り込むことにはなるが、テキストの読み上げが可能だ。これにより、視覚障害のある方でも書籍を活用できる可能性がある。この機能、文芸書など読み進む順番が単純な構造のレイアウトであれば問題ないが、雑誌のようにどこから読めばいいかが判断しかねるような場合には、この機能の実装は難しいかもしれない。また、多くの先進的な電子書籍では、動画や音声などを組み込んで表現力を高めているものがある。現時点でePubには動画を埋め込むような規格は入っていないが、Appleが独自拡張しているために、iBooksでは動画や音声をePubファイルに組み込んだ電子書籍が実現できる。ePubについては、このあとHTML5化されていくとの方向性もあるようなので、おいおい動画などの組み込みは標準の規格となっていくのではと思われる。とはいえ、規格として標準化されたとしても、それを表現できるかはビューワー側の機能に依存するので、注意は必要だ。
【デメリット】
1.紙より可読性が低い
文字を大きくするなどの工夫はできるものの、やはり紙よりは可読性は低い。iPadのような液晶の端末は、発光するので目が疲れる、逆にKindleなどのE-Inkのディスプレイは目には優しいが書き換えが遅いなどのデメリットもある。今後、改良はされていくとは思われるが、紙と同じにはならないかなと思っている。
2.デバイスやアプリケーションごとに操作性が異なる
意外にストレスのなるのがこの操作性の違いだ。ある電子書籍ではページの端のほうをタップすればページがめくられるものもあれば、真ん中あたりでもめくれるものもある。雑誌などでは縦にスクロールしたり横にスクロールしたり、それらが組み合わせてあったりもする。目次などの機能メニューを表示させる方法も、アプリケーションやビューワーごとに異なり、なかなか思うようにメニューを表示できないこともある。
3.そもそも電子書籍端末がないと本が読めない
当然ながら、それなりの投資をして電子書籍端末を入手しなければ本が読めない。現状では、iPad、Kindle、Androidタブレット、PCなどすべてで読める電子書籍というのはあまりないので、それぞれの端末に適した電子書籍を別途入手する必要もある。Kindleの場合は、各種端末向けにKindleのソフトウェアも提供されているので、それをインストールすればマルチデバイスでの読書も可能だ。多くの電子書籍専用端末は、電池のもちがよく数日から数週間充電せずにも利用できる。とはいえ、電池がきれればやはり本は読めない。さらに、特殊な方法でも利用しない限り、読み終わった本を友人に貸すといったこともできない。まあ、コピーコントロールされていない電子書籍のふぁいるであれば、技術的には自由にコピーできるので誰かにあげるといったことも可能といえば可能だ。
4.複数の本を同時に開くことができない
通常、1つの電子書籍端末では1つの本しか開けない。同時に何冊も参照したいという用途では、いちいち切り替えて利用するしかない。この制限、通常の読書ではとくに問題があるわけではないが、教科書などとして利用する場合には一度に複数の本を開きたいという状況もたたある。実際に、複数の本を一度に開けないから電子教科書は使えないというような意見もあるようだ。
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もちろん、ここに挙げた以外にもさまざまなメリット、デメリットはあるとは思う。さらに、最近では電子書籍の領域も広がっていて、たんなる紙の書籍の置き換えからもっと別のものへと発展している。そうなれば、さらにさまざまなメリットや利用方法も出てくるだろう。そういったことについても、おいおいこのブログでも紹介していきたいなと思っている。