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電子手形は中小の資金繰りを円滑化するのか

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 10月11日の日経新聞朝刊の1面トップは、「電子手形7000社参加へ」という記事だった。

 企業間の新たな支払い方法として、11月には電子手形が始まるそうだ。メリットは、紙の手形で頻発する偽造の防止や盗難の防止、印紙代がいらなくなるというものメリットだ。これにより、中小の資金繰りが円滑化するのではという記事になっているのだが、本当にそうなのだろうか。

 我が社でも一部手形で代金を受け取っている。90日の手形で、大抵はすぐに割引して現金化する。割引して現金化というのは、じつは銀行なりに借金しているのと同じ。期日がきて、もしその手形のお金が手形発行者によって支払われなければ、割引を行った自分たちがそのお金を銀行に支払わなければならない。まあ、大抵は手形を発行するのが大手企業なので、期日にお金が払われないことは少ないのだが。

 仕事して代金払ってもらうのに、なんで受け取り側が借金のようなことしないとならないのかと、いつも手形を手にすると納得がいかない気分になる。とはいえ、ここのところ手形取引は減ってはきていた。これはある意味ではいい傾向だったと思っていた。ところが、今回の電子手形だ。これでまた手形取引が増えるのだとすると、本当に資金繰りは円滑化するのだろうかと疑問に思う。

 たしかに、手形をすぐに発行してもらえれば、それを割り引いて現金化はできるけれど、そもそも仕事にすぐに対価を払ってくれればいいわけで、中小はなにも手形が欲しいわけではない。資金繰りが回らない原因を手形取引が減ったせいにするのはどうかと思う。これで安易に、大手が手形を発行するようにならなければいいのだが。むしろ、迅速にお金を支払うような仕組みを、さらに制度化して欲しいと思うし、それこそが中小の資金繰りを本当によくすることだと思う。

 同様な話で、景気が悪くなるとすぐに政策として中小、零細向けに融資枠を設定してって話になるが、そのお金を使って中小、零細だけが獲得できる下請けじゃない「仕事」を創出してくれることのほうがどんだけ重要か。中小企業は借金がしたいわけではなく、仕事をしてきちんと対価を得たいのだ。

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