オルタナティブ・ブログ > むささびの視線 >

鳥のように高いところからの俯瞰はできませんが、ITのことをちょっと違った視線から

生物多様性基本法

»

 先日、ブログでラムサール条約について取り上げた。水鳥の生息地である湿地を保全しましょうというのは、ようするには生物の多様性を確保していきましょうということでもある。

 あまり知られていないかもしれないが、2008年6月に「生物多様性基本法」という法律が施行された。この法律の前文には、次のような記述がある。

 人類もまた生物として、生物の多様性のもたらす恵沢を享受することにより生存しており、生物の多様性は人類の存続の基盤となっている。

 乱暴な解釈をすれば、生物の多様性があるからこそ、人類は存在しているのだということ。『環境ビジネス』という雑誌を読んでいたら、積水ハウスが「5本の樹」計画というのを実施しており、生物多様性を企業活動に生かした先進事例として注目を集めたという記事が掲載されていた。

 この5本の樹というのは、庭づくりの提案で「3本は鳥のために、2本は蝶のために」というスローガンのもと、庭に樹を植えるていくというもの。その際、その地域の気候や風土に合った樹種を選択し、植えていくという。そのほうが、生物の多様性を確保するのは有効なのだ。この記事を読んで、自分が学生のころ学んだ「潜在自然植生」というのを思い出した。その土地に本来あった植生を考慮して自然を取り戻すにはどうしたらいいのか、なんてことを20年以上前に学生の身で真剣に考えていた。それを会社の活動として、いま実践している企業があるということになる。

 環境ビジネスの記事によると、2006年に環境省が実施した調査では、8割の企業が生物多様性に対する取り組みはしておらず、7割が生物多様性と自社活動は関連性が低いと答えていたとか。それから2年ほど経過し、CSRへの意識の高まり、あるいは食の安全なんてことが大きく話題になっているので、この数字はもう少し改善されているかもしれない。しかしながら、相変わらず企業の経営者は生物多様性なんてことは知らないなぁ、という方もまだまだ多そうだ。

 IT系の企業活動がすぐに生物多様性と結びつくわけではないだろう。しかし、「生物多様性基本法」という立派な法律もあり、CO2の削減といったことは巡り巡って生物多様性に影響する話ではある。どんな業務をしていようとも、少しでも多くの人の意識の中にこの「生物多様性」という言葉が入り込んでくれればいいなぁと思う。

 我が家の近所では、よくメジロのつがいを見かける。朝の通勤時などにスズメやヒヨドリだけでなく、このメジロに出会うとちょっと嬉しくなる。ここ数年見かけなかったオナガも最近ときどき見かけるようになった。これもまた、生物多様性ってことかな。

Comment(2)