OracleとSalesforceのクラウドアプローチの違い
先週、Oracle OpenWorldサンフランシスコにおいて、Oracleのクラウドサービスが発表になった。その中身は、Amazon Web Servicesを利用するというものだった。
ITmediaのeWeekの翻訳記事が、興味深い。Oracle CEOエリソン氏は、クラウドという言葉、あるいは現状の流行言葉状態はどうやら気に入っていないようだ。
個人的な感想としては、今回発表されたOracleのクラウドは、画期的な試みではあるけれど、どこまで実際に利用されるのかは甚だ疑問だ。バックアップ先として使われるAmazon Simple Storage Serviceはともかく、Amazon Elastic Compute Cloudのほうが本格的に利用されるようになるには、かなりの時間が必要であろう。テストや開発環境で利用があるのではという話もあるが、セキュリティとか考えるとあえてそれをクラウド上で率先して行う姿は思い浮かべられない。簡単なアプリケーションをというのもあるだろうが、その場合はAmazon EC2の上でそれを自分でセットアップしなければならない。それもまた。かなりの手間ではないだろうか。
OracleがAmazonと組んでクラウドのサービス開始というところには、確かに新鮮さがあるのだが、仮想化された安価なレンタルサーバー上のOracleプラットホームというだけで、なにかそこに極めて優れた新しいクラウド用機能が追加されているわけではない。ある意味、旧来からあるレンタルサーバー上でOracleを動かすということとの違いを見いだすのは、難しい。
OTNでイメージファイルを入手し、Amazon Web Services上に展開し設定するというものではなく、せめてOracle Application Expressのようなすぐに使えるデータベース・アプリケーション構築環境の提供となっていればよかったのかもしれない。これ自体は、Oracleにとってはなんら難しいことではなかったはずだ。
その点、Salesforce.comのPaaSのサービスは、最初からクラウドに最適化されている。どちらのサービスが優れているかを比べるものではないが、Salesforceはクラウド上ですぐに、ある程度の応用的な利用が可能であり、こちらはネイティブなクラウドサービスだなと思えるものへと進化している気がする。
Oracleは現状「いよいよOracleもクラウドのサービスに参入した」という状況であり、それ以上でもそれ以下でもない。Oracleは、このままクラウドへのアプローチを発展させないわけはないだろう。なにせ、いまでは世界中でもっともたくさんアプリケーション製品を手中に納めているし、体力も知力も十分に持ち合わせているのだから、それらをクラウドのサービスに取り込んでくれば状況は一変するかもしれない。
クラウドに対応したからといって、ビジネスが飛躍的に発展するわけではない。とはいえ、クラウドに対応しないと将来的に没落の道を歩くことになるのかもしれない。クラウドへの舵取りの見極めは、Oracleという世界最大のエンタープライズ・ソフトウェアの企業にとってもそう簡単なものではなさそうだ。