仮想化技術でソフトウェアのインストールセットアップがいらなくなる
タイトルがえらく長くなってしまった。昨日、オラクルの仮想化技術に関する戦略発表会に出席した際の話だ。仮想化サーバーの上に特定のアプリを組み込んだOSイメージを配布すれば、OSやソフトのインストール、さらにはその上でソフトウェアを最適に動かすための設定といった作業が、ほとんどいらなくなるという。
昨年11月にサンフランシスコで開催された、Oracle OpenWorldでの目玉の発表の1つがOracleの仮想化ハイパーバイザーの提供だった。このときの発表リリースに、他の仮想化サーバー製品よりも3倍の効率化といったような記述があり、この3倍というのはいったいどこなのかというのが、当時は詳細には語られなかったので、ずっと疑問に思っていた。
昨日の発表会で、昨年のOOWでOracle VMのことを語った米Oracleのチーフ・コーポレート・アーキテクト エドワード・スクリーベン氏が、昨年来の疑問に答えてくれた。基本的にはXenのハイパーバイザーに手を入れてI/Oの効率化などを実施し、それにより実際のアプリケーションを稼動させるようなベンチマークを行った結果、3倍の効率化が図られたということだった。
この場合、比較対象としたのは市場実績の高いVMwareだ。Xenについては、現時点ではOracle VMのほうが効率性が高いのかもしれないが、やがてはOracleが実施した拡張の部分もXenのコミュニティに還元されるはずなので、パフォーマンス的には同等なものになっていくのだと思われる。つまりは、Oracleががんばれば、Xenが速くなるという構図か。
昨年のOOWの発表時点では、Oracle VMを無償で提供しOracleは安価なサポートサービスを行いますというメッセージが前面に出ていて、それ以外になぜにOracle自身がVMを提供するのかは、いまひとつ理解できないものだった。昨日の戦略発表で、「ああ、やっぱりOracleはこれがやりたかったんだよね」というのが、製品の仮想化イメージのアプライアンスとしての提供だ。すでに提供していたOracle Enterprise Linuxと組み合わせて、Oracle製品に特化した「仮想化されたOSとプロダクツのイメージ」を提供するという。
これができれば、ユーザーは必要なイメージをとってきて、仮想化サーバーにプラグインすることですぐに使える。OSのインストール、セットアップだとか面倒なOracle DBのインストールとはもうおさらばということ。たんにセットアップが楽になるだけではない。たとえば、速さを追求したコンフィグレーションとか、拡張性を追及したコンフィグレーションとか、徹底的にセキュアなコンフィグレーションとか、そういった目的ごとに特化したイメージだって作ることができるだろう。
ユーザーだけでなく、Oracleにとってもサポートが楽になるメリットがある。顧客ごとに異なるOSとハードウェアの組み合わせの検証とかいったことがいらないので、問題の切り分けもしやすい。
こう書くと、仮想化が万全のようにも聞こえるが、もちろんまだまだ課題はあるはず。仮想化したネットワークインターフェイスやI/Oにボトルネックが発生する可能性は高いだろうし、仮想化環境で動かすソフトウェアのライセンス問題などもすべてがクリアになっているとは言えない。とはいえ、エンタープライズなアプリケーションを動かす環境としても、ここ最近の進化によって仮想化は確実に一歩も二歩も前進したことにはなりそうだ。