SaaSがユーティリティコンピューティングを実現する
日立ソフトウェアエンジニアリングとセールスフォース・ドットコムが、日本郵政公社に新たに40,000ライセンスのSaaSのサービスを提供し9月から稼働を開始したとのこと。日立ソフトという大手のSIerが、本格的にSaaS型のサービスを自社のソリューションとして取り扱い始めた意味には大きなものがあるだろう。
具体的な発表の中身については、@ITの記事などを参照して欲しい。今回、日立ソフトではSIerとして、セールスフォースのSaaSプラットホームに上に「お問い合わせ対応のシステム」を構築して提供している。利用しているのはPlatform Editionであり、もともと通常のCRM、SFAのライセンスよりも安いものだが、落札価格から計算するとさらに低価格でセールスフォースはライセンスを提供しているようだ。
これについて、セールスフォースの社長 宇陀氏は、オンデマンドのサービスとして捉えた結果だと説明した。つまり、今回のシステムでは、問い合わせ管理に特化した機能だけをSaaS型で提供している。そのため、最低限の機能だけなので、フルファンクションのCRMのライセンスよりもかなり安く提供しているというのだ。もともと、多機能で使いもしないものがたくさん含まれたものを高い値段で買い、うむを言わずに使うというのがこれまでのソフトウェアビジネスだった。しかしながら、かねがねこれはおかしいと思っていたというのだ。
本当のオンデマンドということで、サービスを使った分だけ対価をを払う。これが今回のSaaS上のプラットホームで実現できているというのだ。この発想は、まさにユーティリティコンピューティングを実現していると言ってもいいのではないだろうか。もちろんあらゆるサービスが、蛇口をひねるように簡単にSaaSの上で利用できるわけではないが、SaaSをプラットフォームとし、必要なものだけ構築し、その利用分だけ対価を払うというのは、サービスを受け取る側としてシンプルで分かりやすい構造だ。
今回の発表会では、SIerがSaaS型のサービスを取り入れるという変革も大きいが、その結果としてできあがったものへの利用対価の支払方法がユーティリティコンピューティングの形態になっているというほうが、業界的にゆくゆくは大きなインパクトとなるのではないだろうか。