アジアで研究開発する意義-暑い、熱い上海その2
上海での取材の、本体の記事からはこぼれてしまったものを、ここで書いておこうと思う。
パスカル・セロ氏は、アジア太平洋地域にオラクルが設置しているR&Dセンターの担当責任者だ。ITmediaの記事でも紹介している日立のμチップのセンサー関連のテクノロジーや、セカンドライフなど新しい技術をどうビジネスに活かすのかといったことをテーマに活動しているとのこと。イベント期間中に、セロ氏にインタビューする機会があったので、そのときの内容を記しておく。
セロ氏にアジア地域で研究開発を行うメリットはなにかと訊いたときに、この地域がマルチプルカルチャーなことだという。多民族、多言語の研究者がいて多様な角度からのものの見方、考え方があり、そのあたりのユニークさがメリットの1つだという。それともう1つは、アジア地域で有用なことを生み出すには、やっぱりその地域で考えたほうがいいということ。実際に活動していくには、マルチプルカルチャの中で意思の疎通を図るのは難しい面があるとのこと。テレカンでは難しくても、Wikiやブログを使うと意外と簡単にやり取りできるということもあるとか。このあたりは、技術者の集まりだからこそといったところだろうか。
日本で外資系ベンダーに勤めている方々ならば、少なからず本社との認識のギャップに苦しんでいるかと思う。ローカライゼーションの問題、要求する機能の優先順位の問題などなど、日本ではこうありたい、こうしてくれと強く主張しても、本社サイドからはそれがなかなか理解されない。
もちろん、アジア地域に研究開発拠点を作ったからといって、オラクルからこの「本社と日本のギャップ」がすぐになくなるというわけではないだろう。しかしながら、中国が巨大市場化するなど、アジア地域の市場としての重要性が増す中では、アジア地域のための研究開発拠点を持っているということが、後々ローカルで使いやすい製品を生み出す可能性につながるだろう。
会場ではセカンドライフのデモがあったので、セカンドライフってビジネスとして本当に使えそうですか、とも訊いてみた。するとセロ氏は、すでにセカンドライフのなかで現実として億万長者が登場しているのだからビジネスにはなるのだろう、と笑いながら応えていた。なぜ今回セカンドライフを取り上げたかといえば、セカンドライフの仮想空間というなかで日常とは異なる経験、価値を生み出す可能性を感じたからだという。
日本では携帯型のゲーム端末が流行っているが、研究対象として興味はという問いには、モバイルデバイスの1つとしてゲーム端末も興味の対象ではあるとのこと。すでにゲームの業界では、バックエンドでオラクルのテクノロジーが利用されており、その方向からもさらにこの分野には取り組んでいくことになるだろうとのこと。携帯電話など日本が選考している技術がいくつかあり、それをアジア地域に展開していくというのも、自分たちの活動の1つではあるとのことだった。
技術的にシビアでとてつもなくすごいものが生まれるかどうかはさておき、なんだかちょっと気の利いた面白いものが、セロ氏の仕事のなかから生まれてきそうだなと感じさせるインタビューだった。