23世代目からはPaaS
セールスフォース・ドットコムの新しいバージョンが8月にリリースされるとの発表があった。これは実に23世代目のバージョンアップであり、この世代からSaaSではなくPaaSになるとか。
発表の詳細は、@ITの記事に詳しく掲載されている。PaaSは"Platform as a Service"の略でパースと読む。ソフトウェアをサービスとして提供するところから発展し、プラットホームをサービスとして提供するということ。この方向に舵を切っているベンダーは、いまのところ他にはない。SaaS型で連携や拡張のためのAPIなどを持っているベンダーはあっても、開発環境をそしてアプリケーションの実行環境までもを、ネットワーク越しのサービスとして提供するところは、いまのところ他にはないのだ。
これは、感覚的にはデータセンターのホスティングサービスやレンタルサーバーサービスにむしろ近いかもしれない。めちゃめちゃサービスレベルの高い、レンタルサーバーサービスという感じか。ここでいうサービスレベルというのは、落ちないとか高速、大容量であるとかそういう意味ではなく、ソフトウェアを動かすための便利なツールや機能が揃っているという意味でのサービスのレベルだ。
最近のレンタルサーバーのサービスでは、メールやウェブはもちろん、ブログやアクセス分析、場合によっては簡単なグループウェア機能、データベースも揃っていて、さらに独自のCGIなどのプログラムを設置することも可能だ。とはいえ、この場合は、どんなOSでどんなソフトウェアが使えるかを、ユーザーは常に意識しなければならない。
PaaSはSaaSの発展というよりは、独自の新しい世界を目指しているように思う。ある種、アプリケーション実行環境の仮想化のサービスとも言えそうだ。ユーザーはなんらハードウェアがどうとかデータベースがどのベンダーのどのバージョンかといった、インフラ部分について考慮する必要がない。アプリケーション層とインフラ層をきっちりと分離しているのだ。実際には同じプラットホームで複数のユーザーのアプリケーションが動いているが、そのこともユーザーはなんら気にする必要がない。
企業においては、リソースの有効活用や管理の手間の削減、柔軟性の確保などを求め、まさにこのインフラ部分とアプリケーション部分の分離を行いたいと考えている。サーバー統合、システム統合の次に目指している、ITシステムのユーティリティ化などと言われているもののことだ。PaaSは、ある種その究極的な形なのかもしれない。
現時点で、すべてにおいて完璧なアプリケーションプラットホームを提供できているわけではない。とはいえ、数年後に世の中のどれくらいのアプリケーションが、このPaaSの上で動くことになるのだろうか。どれだけ進むかは、企業はもちろんSIerの意識改革ももちろん必要なことではあるのだが。