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鳥のように高いところからの俯瞰はできませんが、ITのことをちょっと違った視線から

外資系企業のパートナー戦略

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 昨日は、ストレージベンダーのEMCがビジネスアップデートと新製品の発表をおこなった。ストレージベンダーと表現したが、現状ワールドワイドで約40%はソフトウェアからの売上げになっているとか。ITmediaの記事にもあるように、日本ではローカライズの対応遅れなどで、ここまではソフトウェアの売上げ比率は高くなっていないようだ。

 昨年度の実績で、ソフトウェア企業の売上げランキング世界7位。今年の終了時には、6位になるだろうと予測している。その時点で上にいるのは、マイクロソフト、IBM、オラクル、SAP、シマンテックということになる。これらに次ぐポジションならば、ソフトウェア企業としても十分な規模であることは間違いない。

 EMC日本法人の今年のトピックとしては、営業体制の大幅なシフトがある。昨年までは85%が直販、15%がパートナー営業という体制だったものが、今年の10月からは40%が直販で60%がパートナーと逆転したそうだ。2年前には95%が直販体制だったことを考えると、まるっきり違う営業体制の会社になったともいえる。

 外資IT企業が日本で成功しようとすると、パートナーといかにうまく付き合うかが重要になる。日本に法人がない企業が、当初は日本企業を代理店に販売をおこない、そこそこのビジネス展開ができていた。ある時点で、もっとビジネスを伸ばそうと本社が目論み、日本法人を設立し直販に力を入れ始める。その瞬間から代理店が離れ、逆にビジネスが萎んでしまうという事例はよく耳にする話だ。

 EMCの場合は、かつてはかなり高額のストレージを主体にしたビジネスだったので、直販主体でうまく回っていたのだろう。しかし、ここのところソフトウェアを含め全体的に規模が小さい商談も増えてきたことから、パートナー企業との協業で営業力拡大が必須の状況に。ちなみに、最高峰のストレージであるSymetrixも、いまやエントリーは5,000万円からとのこと。結果的に、上の失敗事例の逆をいく、パートナー重視のシフトとなったわけだ。

 で、実際にパートナー営業はなにをしているのかというと、複雑で難しい製品について熟知してもらうために営業トレーニングをしているとのことだ。もちろん共同でのセールスマーケティング活動もある。目指すは、直販と同じ営業力をパートナーにも持ってもらうこと。多種類で複雑なソフトウェアラインナップとなりつつある現状では、この戦略が功を奏すれば日本でもEMCがソフトウェア企業という称号を得ることができそうだ。

 とはいえ、エンタープライズ系IT製品を扱うジレンマは、製品やサービスがどんどん複雑化していて、日本法人そのものですら把握するのに苦労していていて、なかなかパートナーに営業を任せられないところかもしれない。

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