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SaaSってネットワーク・コンピュータ

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 先日来日したセールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフCEO。彼が、オラクル出身であることは、皆さんご存じのことだろう。

 オラクル当時のベニオフ氏は、新しい(キワモノ)製品を担当する人というイメージが。そんな彼が担当した製品のなかには、日の目を見なかったものもちらほら。先日の記者会見の席では、彼と同期で米国オラクルに入社したアレン・マイナー氏が、ベニオフ氏の要請で挨拶をしていた。ベニオフ氏が担当した製品は、本国である米国よりもむしろ日本でのほうが売れたものがあった、なんていうエピソードが飛び出したり。

 ちなみに、マイナー氏は、日本オラクル株式会社の創設メンバー。今ではオラクルを辞め、ベンチャーキャピタルであるサンブリッジの代表を勤める。サンブリッジは、セールスフォース・ドットコムのファウンダーでもある。そのほかにも、@ITの創業にも関わった結果、ITmediaの株主にも名前を連ねる。

 話を戻してベニオフ氏だが、マイナー氏によれば、オラクルのネットワーク・コンピュータを米国で普及させようとしていたのがベニオフ氏、それを日本でも展開しようとしていたのがアレン氏とのこと。ネットワーク・コンピュータやNCのコンセプトは、いま考えてみれば確かにSaaS型のサービスの典型。すべてはネットワーク経由でやってくる。当時から、ソフトは買わずにサーバー上のワープロなどの機能を利用するといったものだった。このNCも、なぜか米国より日本のほうが売れたそうだ。

 当時、NCが普及しなかったのは、まだまだネットワークの帯域が十分でなかったことがその一因であろう。サービスとして提供されていたソフトウェアの品質も、ユーザーが満足するレベルに至っていなかった。サービスで儲けるよりも、ハードやソフトを売って儲けるというIT市場の脱しきれない体質もあったはずだ。

 しかしながら、アレン氏によると、10年近く前になるこのころから、ソフトウェアはSaaSの方向に行くのだと、ベニオフ氏とともに確信していたとか。それを実現する場所が、結果的にはオラクルではなかったとのこと。大きな会社でできることと、小さいベンチャーだからこそできること、ベンチャーだからこそのスピード感がそこにあったのではと分析している。

 一気にということはないかもしれないが、SaaSへの移行はそれなりのスピードで進んでいきそうだ。先日の記者発表時に、セールスフォース・ドットコム日本法人の宇陀氏が、ハードやソフトのバグを修正することでお金を得ているようなSIerはSaaSの時代には淘汰される。顧客の価値を創造するようなSIerでなければ、生き残れないだろうと指摘する。SaaSへのシフトが進んだときに、ITベンダーやSIerの顔ぶれはどのように変わっているのだろうか。

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