エンタープライズ市場への入り方
米国では数年前から、"Did you google him?"(彼のこと調べた?)みたいに、googleが動詞として使われているとか。多くの米国コンシューマの生活の中に、Googleが確実に入り込んできている証だろう。日本でも「ググる」という言葉を耳にすることが多いのは、IT業界にいるからだろうか。ちなみにこちらも、数年前から英辞郎には検索語として載っている。
そのGoogleは、Enterprise Searchの世界に進出している。若干遅れて、エンタープライズ領域で確固たる地位を築いてきたオラクルも、先日Enterprise Search製品を発表した。先日来日した米国オラクルのCEO ラリー・エリソン氏は「エンタープライズの世界は、我々の領域だ。そのことがまさに我々の優位性だ」と、新たにこの領域に参入してくるGoogleに対し自信をあらわにしていた。
エンタープライズ・コンピューティングの領域は、たしかにコンシューマ領域とは異なる面をもっている。高度な要求がさまざまあり、先端技術の採用よりも信頼性が重視される傾向がある。そのぶん複雑で費用も高い、というのがこれまでの認識だろう。そこにコスト面での優位性を引っさげて参入してきたのがマイクロソフト。マイクロソフトには、圧倒的な体力があったので、エンタープライズ領域でも通用するように、自らの製品を成長させることができた(その成長が現時点で必要十分かどうかはよくわからないが)。Googleにも、十分体力はありそうだ。最初のうちは、もちろん経験がものをいうかもしれないが、オラクルというといいお手本が目の前にある。それに追いつけ追い越せで、開発を進めることがでそうだ。
これとはまったく異なる環境下そしてアプローチでエンタープライズ領域に進出しようとしているのが、シックスアパートのMovable Type Enterpriseだ。Movable Typeは、個人ベースのスキルの高いユーザーが満足できるようさまざまな機能が追加実、装されてきた。これは、スキルフルな人には使いやすいが、企業内でもっとカジュアルに使いたいという要望には応えていない。そのために、複雑なMovable Typeを使いやすくしたのが今回のMovable Type Enterpriseの特徴だという。もちろん社内ブログであても、セキュアで高い信頼性が必要とされるのは同じ。しかしながら、情報の共有という本来の目的を第一に考えた場合は、いかに情報提供者と受取者の敷居を下げるかが成功の大きな要因となる。
もしかすると、コンシューマとエンタープライズの領域が、今後はどんどん重なっていくのかもしれない。安く高信頼性のものを簡単に使いたいのは、どちらであっても同じだから。このすべてを満足させられるものだけが、ソフトウェアとして生き残るのか。とはいえ、かなり荒削りだが、こりゃ面白いというアプリケーションにそそられるのが技術者だったりするのだけれど。