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鳥のように高いところからの俯瞰はできませんが、ITのことをちょっと違った視線から

システムの品質を高める努力に注目したい

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 毎日インタラクティブの記事によると、フィギュアスケート男子全日本選手権の採点ミスは、結局プログラムのミスではなく人的なプロセスの欠如が理由とのこと。年末にきて、スポーツの世界にまでプログラムミスが重大な影響を及ぼしたのかと、ちょっと暗い気分になったところだったが、どうやら「人」の問題だったようだ。

 大きなシステムの事故が相次ぎ、ITの信頼が大きく揺らいだ2005年。ITが生活や経済活動に不可欠な存在になった今では、些細な不具合が社会に大きな影響を及ぼす。不可欠な存在になったとはいえ、高い重要性の割にはどうも世間の評判は低い。自動車を購入してマニュアルを読まないと運転できないことはほとんどないし、右にハンドル操作したのに左に曲がるような車はない。冷蔵庫だって購入して使い方に戸惑うことは、まずありえない。システムでは、そんな常識が通用しない。この不具合は「バグ」です。サポートは「有償」です、というのがまかり通るのがいまのITだ。

 そんなシステムの開発現場は、オフショア開発や短納期、コスト削減など厳しい状況も多々あり、品質を上げるのが難しくなりつつあるのも事実。東証のトラブルでは責任をとってトップが退任するという前例ができ、今後同様な事故が発生した場合には、同じような「責任のとり方」が一般化することだろう。それが、最終的にシステムの品質を高める方向で、影響を与えるのならばいいのだが。

 心ある開発担当者は、テストやプロジェクト管理の重要性に気づき行動を開始している。建築業界の信頼を大きく失墜させた耐震強度の偽造を反省に、どんな理由があれ、現場の技術者が故意に手を抜くような状況だけは避けなければならない。

 年末から年始にかけては、東京三菱銀行とUFJ銀行の統合にともなうシステムの融合が始まる。ここで大きなトラブルが発生しなければいいのだが。なにか起これば、またITの信頼がさらに大きく揺らぐことに。2006年は事故やトラブルのニュースや話題を追いかけるのではなく、現場で奮闘するシステムの品質を上げるための努力や工夫に、ぜひとも注目していきたい。

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