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J-SOXに対応するにはどんなスキルが必要か

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 景気はなんとなく上向いているらしい。冬のボーナスは2年連続で増加なんていうニュースも聞こえてくるが、自分にはあまり関係ない。IT業界の景気はどうだろうか。今年前半は個人情報保護法対策の新たな需要に沸き、ここ最近は日本版SOX法への対応がさらに大きな盛り上がりをみせそうだ。

 CAが、SOXコンプライアンス オフィサーの募集をおこなっている。業務内容は、USのSOX Teamに協力して日本の内部統制を評価、改善すること。2008年3月期に導入が予定される日本版SOXのへの対応、社内プロセスの定期的な見直しや改善をおこない、問題点について改善案の策定から実施、そしてSOXの社内認知度を高めるというもの。求められるスキルは、監査法人で監査業務の経験、財務会計の知識があること。冷静で合理的な判断ができ、細心の注意を払いつつも全体像を把握する能力、Self-motivateでありSelf-drivenで仕事ができることだそうだ。もちろん英語力も必要だ。

 CAの場合、社内にシステムの専門家はたくさんいるはずだ。そんな技術者のなかには、外部の顧客に対しSOX法対応のソリューションを語っている人もいるだろう。とはいえ、自社内の監査のためには、財務会計の知識のある監査経験者を求めているようだ。「求人」「SOX法」をキーワードにGoogleで検索してみると、SOX法対応のための人材募集情報がたくさんヒットする。多くは財務会計、監査の経験者ということでCAの場合と一致する。

 日本版SOX法では(まだ草案の段階だが)、内部統制実現のために明確に「情報システム」の活用を謳っている。財務会計の知識を持ちつつシステムにも精通していないと、日本版SOX法に対応した監査を実行するのは難しいのではないだろうか。財務会計の専門家がITに歩み寄るのがいいのか、はたまたITの専門家が財務会計の知識を取得するほうがいいのか。どちらにしても、双方の知識をもった人材は国内には極めて少ないのではないだろうか。

 べリングポイントが7月に内部統制支援を強化する発表をおこなった際には、「内部/IT統制改革本部」を当初は80名で立ち上げ今後1年間で300名に増員するとのことだった。現状を問い合わせてみると、5ヶ月ほど経過した現時点で100名に、3ヶ月以内に130名体制になるとのこと。当初の300名体制という目標は変わらない。ベリングポイントの場合は、組織名にIT統制改革とあるくらいなので、ITの知識もある人材が求められているだろう。現状は内部での異動、中途採用含め集めているようだが、一気に300名の優秀な人材を集めるの大変そうだ。

 SOX法関連の情報を追いかけていると、ITシステムが関わる範囲はとてつもなく広く感じる。考え出すとキリがなく、心配し始めると対象となるシステム領域はどんどん広がる。かなり細かい業務や作業ログも必要だし、それらをたんにシステムで蓄積するだけでなく適切に取り出せるような仕組みも必要だ。取引に疑問が生じれば、関わっていた人々がやり取りしていたメールのログを逐一チェックしたりもする。今後は、個人メールと業務メールはきっちりと分けておいたほうがよさそうだ。

 財務会計の知識もITの知識も持ち合わせるようなスーパーマンがいなければ、それぞれの専門知識をもった人同士が協力し合って事を進めるしかない。せめて、双方が共通する言語をしゃべれなければ協力体制もままならない。共通言語くらいの知識であれば、ちょっと努力すれば取得可能かもしれない。そこには、新たなビジネスチャンスやポジション獲得の可能性もありそうだ。技術者の方々は、IT系の資格取得を目指すより、財務会計の知識や資格を身につけたほうが、手っ取り早くボーナスを上げる武器になるかもしれない。

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