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BCPの効用

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 会社を立ち上げたときに、中小企業なのだから商工会議所の会員にならねばと思い込み登録した。依頼数年間、社員の福利厚生でしか利用していないが、さまざまなセミナーや交流会の開催を知り、積極的に関わってみようと考え、手始めにいくつかのセミナーに参加している。

 さっそく今日は、「中小企業のための危機管理対策セミナー」に参加した。最初の基調講演に登壇した長岡技術科学大学工学部経営情報系 助教授 渡辺研司氏の話はなかなかリアリティがあり面白かったので、一部紹介しておく。講演タイトルは、「企業経営における事業継続マネジメント ~地域型BCPの効用とその実践~」というもの。BCP(Business Continuity Planning)の効用と、ただ計画するだけでなくそれを自社以外の組織、地域と連携させ実践するBCM(Business Continuity Management)が重要という内容だ。

 新潟県中越地震の際には、二輪車のメーターを製造する工場が現地にあり、その工場が止まることで結果的にヤマハやホンダといった最終製品の組み立てラインが止まるという事態を招いた。これは、昨今の製造現場での効率化されたSCMによる調達のため、余裕や無駄がほとんどないので、サプライチェーンの一部に障害が起きるとそれが伝播する速度も速く範囲も広く「他社リスクの増大」が起こったのだ。通常では便利で効率的なネットワーク型社会も、何かがくずれるとその影響は次々と広がる。地震が発生したのが遠方でも、自身のビジネスに影響が出るかもしれない。

 BCPを導入していないがために、何らかの災害でビジネスが長い期間止まってしまうと競合に負けてしまう可能性もある。そのためには、サプライヤーともBCPを共有する仕組みが必要だ。また新潟の地震の際には、復興までのあいだ地域のなかで企業や住民が補完するような状況も生まれた。BCPの考え方を自社のビジネスに留めることなく、ビジネス上関連のある企業はもちろん、地域といったコミュニティにも広げる必要がありそうだ。

 POSデータの利用で興味深いエピソードは、大規模な災害が発生したあとDIYショップなどで時間経過と共に何が売れるかを分析し、それらの商品を切らさないようにするということ。水害などの場合は、災害発生当初はモップや雑巾、バケツなどが売れ、次に水が引き乾燥すると粉塵対策でマスクなどが売れるとか。これに対して商品がなくならないように補充することは、大きな社会貢献でもありビジネスチャンスでもある。小売業のビジネスは、必要なものを必要なときに切らさずに店頭に並べること。まさにこれは、小売業のBCPというわけだ。

 先日の東京証券取引所のサービス停止では、立派なBCPがあったのにそれがうまく機能したとはいえない。計画を立てるのは簡単、それを継続的に「本物」にしていかなければならない。訓練を続け、BCPの実践を「身体」で覚えることが重要だ。来年の2月には、政府が中小企業のBCPの指針を発表するそうだ。それを期に、BCPを立てる動きが中小企業に広がるかもしれない。立派な計画を立てたなら、継続的な訓練を忘れずに。

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