SOAはテクノロジーの上にきちんとビジネスを載せることじゃないか
怒賀さんの「SOAの課題はテクノロジーじゃないかな」にコメントを入れようかと思っていたが、時間が経ってしまったこともあり自ら1本書いてみることにした。怒賀さんは「SOAはビジネス視点でなくてははじまらない」という世間の声に対して、そのことは理解できるがパフォーマンスなどの技術的な課題を克服しないとならないのでは、という見解からXMLの高速処理へと話を繋いでいる。
今年の3月に、Webサービスイニシアティブの国際シンポジュウムの手伝いをした際にいくつかの講演を聴いて感じたのは、技術的な課題を解決すると同時にビジネスの視点が必要だということ。これは、当たり前といえば当たり前。ところがこれまでは、Webサービスのための標準規格作りや相互接続性検証などの技術的な問題解決に注力し、中心となって活動してきたのもIT系のベンダーであった。それが、ここ最近はWebサービスの実現が競合他社に対する優位性につながると考え始めた「IT以外の企業」がでてきて、Webサービス普及の活動に参画するようになってきたとのことだ。Webサービス(あるいはSOAと置き換えてもいいだろう)をソフトウェアを連携させる技術的な手法と捉えるのではなく、ビジネスを継続させるための方法として、各種の標準化やグローバル化に「物申す勝ち組」の企業がでてきたということだ。
たとえば、現状、なか1日で納期回答をしている企業が翌日回答できるようにすることで競合に優位に立てる。そのときの実現方法に、SOAがあるという考え方。これは、Webサービスというシステムで既存の企業のソフトウェア群を置き換えることを目的としているわけではない。納期回答時間を短縮するために、どのシステムを連携させればいいかを考えることだ。場合によっては、システム連携の前に既存システムのバッチ処理性能を向上させるという判断もあるだろう。あえてデータをXML化してシステムを連携させるのは、そのあとかもしれない。
そういったなかでは、XMLなどの役割は共通言語に近いものだ。先のシンポジュウムでOASISのパトリック・ギャノン氏は、「オープンスタンダードであることがビジネスの公平、公正性の保障と透明性を提供する」と述べていた。この考え方も、興味深い。情報がXMLのように誰にでも利用できるかたちになっていれば、先駆者だけがその市場で得をするということを阻止できるというのだ。そうなると、企業の優位性はシステム化などの技術の部分ではなく、ビジネスの中身そのものに重心が移る。もちろん技術の上にうまくビジネスを載せられれば、さらにその優位性は高まる。
まだまだこの分野に対する知識が乏しいので結論めいたことは述べられないが、システムに携わっている人々の多くは、技術的な「手段」にすぎないものを途中から「目的」と勘違いしてしまうことが多々ある。目的はあくまでもビジネスの成功であって、そのために手段をどう活用するか。高度な技術を目の前にしてさあどう使うかと考えているようだと、SOAはなかなか成功しないだろう。