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鳥のように高いところからの俯瞰はできませんが、ITのことをちょっと違った視線から

極小企業の経営者の視点

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 みなさん、はじめまして。谷川と申します。プロファイルにも書きましたが、開発エンジニアから雑誌編集者、外資系ベンダーのマーケティング、広報担当など経て、現在は小さなソフトハウスの経営に参画しながら、IT系ライターの仕事をしています。UNIX関連との付き合いが長く、その後はエンタープライズ系製品に近いところで活動してきたので、企業向けのソフトウェアやシステム関連について、ITmediaの記者さんとは違った側面から捉えられればと考えています。

 鷹の目のように高いところから俯瞰はできませんが、滑空するムササビの目線くらいになれればと。ムササビが夜行性だからといって、よなよな赤坂あたりでくりひろげられているであろう、怪しい噂話の宴席からネタを集めるようなことはありません。

 自 分の思考の原点は学生時代だと思っていますが、そのころは自然保護や環境保全というコンピュータの世界とはかけ離れた分野に身を置いていました。当時の恩 師の言葉に、「何を研究対象にしてもいいが、最終的にその成果が人間にとってどう影響し、いいものであるかを考えるように」と、農学はピュアサイエンスと は異なり応用科学なので「人間にとって」どうかを考える学問だということです。この考えを、ITの分野にも適用したいと思っています。そこで、取り上げる 内容についてもシステムのためのシステムではなく、人のためのシステム、結果として人々の生活にどう結びつくかを考えていければと。「ITで世の中が幸せ になれるか」がテーマでしょうか。

 さて、小さいながらも会社経営に参画していると、キャッシュフローがどうしたとかいったあたりを実感できる。大規模な会計ソフトの話をしていても、 普通にサラリーマンだけをやっていると、企業のお金の出入りのタイミングとか納める税金の話などは理屈としてしか頭に入ってこない。それでは、なかなか中 小企業の経営者層の考え方を理解するのは難しい。

 エンタープライズ系のIT企業が、ここ最近こぞって中堅、中小企業をターゲットにしている。実際 のところ、上位層から個々の案件規模が小さいこの層に降りてきて、うまくいっているベンダーの話は聞いたことがない。現在は、投資時期で回収はこれからだ というのかもしれない。中堅はまだしも、中小企業の実態やニーズを大手ITベンダーが把握するのはなかなか骨が折れる。中小企業規模だと、銀行とのやり取 りや取引先とのやり取りの主流はいまだ紙ベース。MS Office製品を中心としたIT活用はおこなっていても、メールのレスポンスよりも担当者の電話のほうがことが早く進む。

 中堅、中小企業向けの アプリケーションの多くは、エンタープライズ系のサブセット的な位置づけのものが多い。その先には個々の企業でアプリケーションを導入するのではなく ASPのモデルがあるが、日本はビジネスアプリケーションのASPモデルはうまくいっていない。ベンダーサイドが自らのビジネスの効率化のために、薄利多 売的に中堅、中小企業マーケットを捉えているうちは、なかなか成功する企業は出てこないだろう。成功のためには、ベンチャーキャピタルと手を組んで、自ら が中小企業のビジネスを作り上げていくような新しい発想も必要かもしれない。

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