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「次の10年をどうするか」って何よ

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「次の10年をどうするか」最近よく聞くワードです。
先日もある会合で、「5年先、10年先を考えないと」ということが議題に上がりました。
私はこの手の話を聞く度に、違和感を覚えます。
だって、10年先なんて、分る訳ないじゃん。
10年生き残る会社は1%と、銀行の方に言われたことがあります。
その生き残っている会社も、事業内容はそのままではないと思います。
環境も変わるし、自分自身も変わります。
よく自己啓発のセミナーとかでも、"10年後のなりたい自分から逆算して今やるべきことを考えましょう"みたいなのがありますが、それも、意味があるとは、私には思えません。
10年前、今の自分が大学教授になっているなんて、誰が想像したでしょう。私の頭にはこれっぽっちもありませんでした。
もちろん、行き当たりばったりでなった訳ではなく、3年くらいの計画を一つ一つクリアしていった結果です。(例えば、博士の学位は取ろうと計画を立てたから、取得できた訳で、ある日突然、もらえたのではありません)

「5年ならまだしも、10年先は長すぎる。中長期計画なら3年で十分だと思います」と発言したところ、
「3年で組織を大きくできますか?」と直ぐに反論が来てしまいました。
「組織を大きくすることが、目標ですか?」と質問に質問を返してしまい、大きくできるかどうかは答えずじまいになってしまいましたが、私はできる、と思います。
2000年4月にITベンチャーに入社したとき、その会社は十数名程度、技術者は取締役と私、それと新卒の3名しかいませんでした。その後、2003年6月に東証マザーズ上場を果たしたときには、100名体制の会社になっていました。
kaisya_chourei_suit_s.pngこんな話をすると、過去の成功体験に囚われているなんて、言われてしまうかも知れませんが、ベンチャー支援資金の応募資格も、創業後5年以内、7年以内ということが多いのは、過去の事例の成否から考えられているのだと思います。
逆に、10名の会社が、10年後に100名にするために、「毎年25%ずつ増やしていこう。1年後13人、2年後16人、3年後21人・・・」なんて、計画を立てても、まず、無理ですよね。

計画は、計画通りに進めるためだけにあるのではなく、現在地を確認しながら、都度、修正するためにも必要なものなので、計画に修正はつきものなのですが、それにしても、目標に向かっての道筋が見えない計画は、計画としての意味を成しません。
100名規模の会社にしたい、ということに意味がない、と言っているのではなく、会社自体が存続していないかも知れない、10年という時間軸に意味がない、ということです。
エネルギー問題や宇宙開発など、国家プロジェクトや大事業はそのくらいのスパンでの計画が必要ですが、そうでもないのに、「10年後」なんて言っているのは、「いつかね」というのと同じです。
この場合、「100名規模の会社」はビジョンです。もちろん、ビジョンは(この例が良いビジョンかどうかは別として)、大切です。
ビジョンを踏まえて、3年後の目標を決め、それに対して、計画を立てることが、現実的だと思います。
実際に、中長期計画は3年~5年を目途に立てている企業は多いのではないでしょうか。

では、なぜ、最近、10年後といったワードが出てくることが増えたのでしょう。
第4次産業革命、DX(デジタルトランスフォーメーション)に代表される環境の劇的な変化、IMD「世界競争力年鑑」でも明確に表れている日本企業の競争力低下、このままでは立ち行かない、という危機感の表れだと私は思います。
10年後を設定することで、時間軸で考えることを一旦止めて、今までの延長線上にはない、新たな姿、ビジョンを明確にすることに意味があるのだと思います。
「新たな姿」と聞くと、「まったく新しい発想が必要」、「課題解決じゃだめだ」と思いがちですが、そういうことではありません。
SCAMPERに代表されるアイデア発想法のように、既存のものからでも、組み合わせや使い方を変えることから新しいものは生まれます。ブルー・オーシャン戦略として有名な任天堂のwiiも、「既存のもの」から取り除いたり、付け加えたりして、新たな価値を創造することに成功しました。
かつて流通業界に大改革を起こしたセブンイレブンのPOSシステムだって、大店法による規制、店舗面積が狭いために発生する機会ロスのための「課題解決」です。

それを考えるのは誰か。もちろん、ビジョンを示すのは経営者の仕事ですが、検討を進めるのは、10年後、経営をリードすることになる若手が中心になるべきだと思います。
10年後、その会社の中心となる人たちに、彼ら自身が「10年後もこの会社にいたい」と思わせるような会社像を描かせることが、何よりも大切なのだと思います。

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