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授業にタブレットPCは必要か?不要か?

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少し前ですが、1人1台のタブレットPCを使ったICT活用授業の実証研究が目黒区立中で始まりました。

●電子黒板に1人1台のタブレット 中学でIT活用授業の実証研究スタート(ITmedia ニュース 2014/04/21)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1404/21/news111.html

東京都目黒区教委が、日本マイクロソフト、NEC、NTT東日本と共同で行うもので、タブレットPCに解答を書き込むと電子黒板に表示されたり、1枚の白地図にクラス全員で同時にマークを付けていくなど、生徒同士で情報を発信・共有する機会が多いの特徴とのこと。

伊藤惠造校長はタブレットPC活用の魅力として、
(1)録画機能や映像アーカイブを活用できる再現性
(2)情報を共有する効率性
(3)数値や資料をビジュアルで見られる分かりやすさ
(4)個々の理解度に合わせて学べる個別対応
(5)生徒同士の学びを促進する共同学習
などを挙げる。

また、こんなニュースもありました。

●教育分野のタブレット関連市場、5年後は3倍に--IDC予測(ZDNet Japan 2014/03/07)
http://japan.zdnet.com/mobile/analysis/35044900/

教育現場のタブレットPCの利用状況についての記事ですが、

ウェブアンケート調査でタブレットの導入状況を学校の教職員に聞くと、「導入済」9.8%、「導入予定」20.4%、「導入予定なし」53.1%、「知らない」16.7%という結果だった。

と、導入済みと導入予定を合わせて3割を超えています。

「導入予定なし」と回答した校長や教頭にその理由をたずねると「使わせたいが予算がない」との回答が66.0%と6割を超え、逆に「ICTを使う必要性を感じない」の回答は4.3%と少ない。

とのことで、タイトルの「タブレットPCは必要か?不要か?」という議論は、少なくとも現場ではあまりないようです。

予算次第で、一気に拡がる可能性もある、ということです。

一方、通信教育や塾では、もっと進んでいて、CMでもお馴染みのベネッセの「進研ゼミ」、ジャストシステムの「スマイルゼミ」や、学研「学研iコース」など、タブレットPCの活用は、もう当たり前のサービスになりつつあるように思います。

タイトルに書いてしまったものの、もう、「授業にタブレットPCは必要か?不要か?」という時代ではないようです。

わたしのパソコン教室にも、タブレットを活用した学習塾をやりませんか?とDMがよく届きます。

タブレットPCで、まず、子どもの興味を引くことができるし、リアルタイムにデータが取れるのはメリットは大きいと思います。

進研ゼミ「チャレンジタッチ」では、読み書きなどの繰り返し学習に、字形を間違えたら、1画ずつ即時判定をするなど、子どもが面倒くさがって、投げ出しがちだった反復学習をタブレットPCならではの魅力で習慣化させる工夫がなされています。

ちょっとした疑問はタブレットPCが解決してくれるので、先生がいる教室でも、先生の負担軽減・時間効率を上げるのに役立ち、生徒個々に向き合える時間を、よりじっくり教えるべきことにあてられるのではないかと思います。

こんな風に書くと、いいことばかりのようなタブレットPCの学習利用ですが、もちろん問題もあります。

最近、こんなニュースがありました。

●授業用タブレットで不具合続出…開始に大幅遅れ(YOMIURI ONLINE 2014/05/14)
http://www.yomiuri.co.jp/it/20140502-OYT1T50111.html

すべての新入生が授業用のタブレット型端末を購入した佐賀県の県立高校で、参考書などの電子教材をダウンロードできないトラブルが相次いでいる。

一斉に大量のデータをダウンロードしようとしたら、時間がかかって授業時間(50分)内に終了しないのは当然で、これは、タブレットPCの不具合ではなく、運用の不手際ですね。

一度にではなく、何回かの授業に分けたり、ダウンロードだけでなく、数個USBメモリを用意して順番に配布したり、回避策はいろいろあると思います。それを知らない教員を責める意見もあるようですが、それは、現段階ではちょっと酷な気がします。電子教材を提案した業者側の説明責任の方が大きいと思います。
それに、何でもかんでも電子媒体にすれば良い、ということでもないでしょう。タブレットPCが導入されても、従来の教材の価値は変わらないと思います。

また、こんな記事も見つけました。

●最新デジタル機器が子どもたちに与えている影響とその対処方法とは(Gigazine 2014/05/04)
http://gigazine.net/news/20140504-children-ipad-addiction/

イギリスの教員講師協会(Association of Teachers and Lecturers:ATL)の発表で、子どものタブレットPC利用による悪影響について書かれています。

iPadを器用に使える3歳から4歳の子どもは、画面を指でスワイプすることはできてもそれ以外の指先の器用さには著しい低下がみられる

上の年齢層の子どもについても、タブレット端末に過度に接することによって記憶能力が大きく影響を受け、従来型の紙と鉛筆によるテストを最後までやりぬくことができないケースが多くみられる

確かに、大人でもパソコン(ワープロ)の文字入力で漢字がかけなくなったり、電子辞書の利用で、紙の辞書をひけなくなったりしますからね。

「タブレットPCは不要。黒板とノートがあれば十分」ということでは無いと思いますが、「タブレットPCがあれば、黒板やノートは不要」ということでも無いようです。

いくら興味を引けるからと、ノートやワークシートでできるようなことにタブレットPCを使っても、それが日常になってしまえば、いつまでもその効果は期待できません。
電子黒板が当たり前になれば、情報を共有するのに、従来のように前に出て黒板に書かせたり、模造紙に付箋を貼ったりする方が、逆に、新鮮で興味を引くことになるかも知れません。

大切なことは、「タブレットPCを使う」ということではなく、「何をどのように教えるか」です。
タブレットPCの導入で、その幅が拡がり、先生の指導法や子どもの学び方の選択肢が増えるのだと思います。

まだ、何が最適なのか試行錯誤の段階なのかも知れませんが、紙で作業をすることと、タブレットPCで作業することを、うまく使い分けて活用していくことが大事なのだと思います。

これからは、「授業にタブレットPCは必要か?不要か?」ではなく、「授業にタブレットPCをどう使う?」という議論がもっと活発に行われることになるのでしょう。

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