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子どものICT教育-教えなくていいことと教えるべきこと

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最近、ICTを利用した子どもの教育の記事を良くみかけます。

ITmediaオルタナティブ・ブログでも片岡 麻実さんが「生まれた時からデジタル・ネイティブな子供たち と教育」というエントリで、

最近、子供のプログラミング教育に関する記事を頻繁に見かけるようになりました。一昔前はマイコン少年・理系オタク的な世界と認識されがちだった「子供のプログラミング教育」。それがごくあたりまえなことになってきた感があります。

と、書かれていました。

そこで、気になった記事をいくつか紹介しながら、子どものICT教育についてのわたしの想いを書いてみます。

少し前、CNET Japanのニュースでこんな記事がありました。

■現小学生の65%は今存在していない職に就く--マイクロソフトが教育事業に取り組む理由
http://japan.cnet.com/news/business/35018390/

日本マイクロソフトが、東京・豊島区の中学校で、タブレット型PCなどを利用した公開授業を行ったそうです。
化学物質の反応の様子を調べる実験をしたところ、集中力のなかった生徒が積極的に学習に取り組むなど、成果が上がった、とのこと。
この公開授業、PCはレノボ・ジャパンが提供し、豊島区教育委員会や東京大学も加わり、講義のノウハウを伝えたそうです。
なんでも、「21世紀型スキル」の育成を目指している、とのことで、東京大学の山内祐平准教授は「小学生の65%が今はまだ存在していない職業につく」と指摘したそうです。

確かに、そうだと思います。今のわたしの仕事だって、わたしが子供の頃は無かったでしょうから。
でも、子どもに、タブレットPCを与えて理科の実験をすることが、そういうスキルに結びつくのでしょうか。
記事を読んだ限りですが、わたしは、「ちょっと違う」という気がしました。

記事には、タブレットPCを使う利点について
・持ち運びができること
・キーボード・タッチスクリーン・ペン入力の3つが利用できること
が挙げられてました。
えっと、それだったら、普通に、ノートと鉛筆でいいじゃん、とわたしは思ってしまいました。

タブレットPCを使って子供の集中力が増したのは、操作性がノートと鉛筆より優れているからではなく、目新しいから。
それはそれで、取っ掛かりとしては良いのかも知れませんが、そこに興味が集中すると、肝心のデータが何の意味か分からないまま進んでしまいます。
「実験の様子をデジタルカメラで撮影しながら、タブレットPCに入力」なんて、まさに、その典型で、確かに、スケッチすることに比べたら、楽しいでしょうけれど、その操作は記憶に残っても、実験そのものの理解度は逆に落ちてしまうのでは?
それに、ITの操作性は、それこそ10年後には変わります。
タブレットPCを使って、実験結果をまとめられた、といっても、10年後にはその技術は役立ちません。
必要なのは、利用技術ではなく、変わらない本質を学ぶこと、だと思うのです。

また、もう少し前になりますが、こんな記事が日経ITproに掲載されてました。
■「読み・書き・プログラミング」の時代が来る?
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20120523/398607/

タイトルに関してですが、まさに、そういう時代が、もうすぐそこまで来ているように思います。
そろばん(計算)にプログラミングが取って代わる、という意味ではなく、プログラミングを、読み・書き・そろばんと同じように教育に取り入れられる時代が来る、ということです。
ただ、日経ITproの記事の内容は、そういった教育についてではなく、プロ顔負けのプログラミング技術を身につけた中高生の紹介でした。
IPA(情報処理推進機構)の「未踏プロジェクト」には最年少で採択されたシステムを開発している高校生、米スタンフォード大学のプログラミングの授業をiPhoneで見ている中学生。
開発ツールが安く手に入るようになったり、オンラインで学べる環境もあるので、やる気さえあれば年齢に関係なく、プログラミングができるようになる、という記事です。
素晴らしい事です。
でも、「そろばん(計算)」と比べると、やはり、一部の特別な話のような気がします。
わたしは、そういうことではなくって、もっと、国語や算数、理科、社会と同じように、普通の子どもが普通にプログラミングを学ぶ時代が来るのではないかと思うのです。
それに、子どもの頃から、プログラミングを学ぶのは、スーパープログラマーになるため、では無いと思ってます。


子どもにコンピュータやプログラミング、というと、「おたくっぽい頭でっかちな子ども」を想像してしまいがちです。
前述の片岡 麻実さんのブログでも、子どもにパソコンを教えていると、

「子供の時からWordやExcelを習うより、外で遊んだり情操教育にやったほうがいい」「子供の時しかできないことをやっておいたほうがいい」

といった意見をもらう、と書いてありました。

「外遊び」は、もちろん大切なのですが、それは、パソコンやプログラミングの教育は競合するものでは無いように思います。そんなことを言い出したら、国語、算数、理科、社会どれをとっても、競合してしまいます。

これだけ、情報化が進んで、日常にコンピュータ、アプリケーションが浸透している社会では、パソコンやプログラミングについて、子どもの頃から学ぶ機会があるのは、むしろ、自然なことのように思います。

その目的は、タブレットPCやアプリケーションの使い方を覚える、というのではなく、コンピュータを使って、子どもが、科学的思考や創造性を伸ばしたり、可能性を拡げられるようになること、だと思います。
それこそ、10年後、今存在していない職に就いても、活躍できるように。


先月、 SVラーニングで 「小学生でもできるAndroidアプリ作成講座」を実施しましたが、実際の参加者に小学生の姿はなく、最年少は高校生でした。
今度は、「夏休みキッズ特別企画」として、小・中学生を対象に、 「Androidアプリ作成コース」を開催しようと思います。
Androidアプリ作成と言っても、Java言語から勉強するのではなく、MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボのツール「App Inventor」を使って作ります。

「App Inventor」では、プログラミング言語の知識は不要で、パズルのように部品を組み合わせていって、楽しみながら、アプリを作ることが出来ます。
プログラミング言語のソースを見せられて一から構文を教えられたら、ゲンナリしてしまう子どもでも、興味を持って臨むことが出来ると思います。
そういう意味では、最初の記事のタブレットPCと同じです。ボタンやラベルなど必要な部品をドラッグ&ドロップで並べられたり、部品のブロック同士をはめ込むと、カチッと音がしたり、子供にウケがいいのです。
キッカケは目新しさで構わないと思います。

でも、「App Inventor」の本当にいいところは、プログラミング言語や開発環境の習得時間を短縮し、ロジックや、アイデアの具現化に集中できるところです。
そこが大切なのは10年後も変わりません。

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