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捨て身のマーケティング

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サンガツが今後の作品の著作権を放棄」(ナタリー)という報道がありました(公式サイトの発表)。

サンガツが2012年以降の作品について著作権を放棄することを発表した。

彼らが今後どのように作品を発表していくのか具体的には明らかになっていないが、現存するフリーMP3レーベルのようなものは作らず、音源ベースで考えること自体をやめるとのこと。

著作権放棄は今年から5年間行われ、良い感触を得られれば5年後以降も続けるという。

公式サイトを見ると数年に1度というゆっくりとしたペースでアルバムを発表しているようなので、元々レコードの売上げが収入の中心ではなかったのかもしれません。また、「音源ベースで考えるのをやめたい」ということですから、今後、商業(並の)音源を作っていくということでもなさそうです。サンガツにとって何が「良い感触」という判断基準になるのかわかりませんが、5年後のようすを見守ってみたいと思います。

少し振り返ってみると、レディオヘッドが「In Rainbows」をユーザーが決める価格で売り出したのが2007年です(「レディオヘッド「値段はあなた次第」販売、日本でも」(ITmedia))。ユーザーが望むなら無料でもかまわないというもので、かなり話題になりました。しかし、レディオヘッドが同じ方法でアルバムをリリースすることはありませんでした(「レディオヘッド、pay-what-you-wantプロモーションは続けず」(CNet))。前後して、トレント・レズナー率いるナイン・インチ・ネイルズがアルバムを無料でリリースしたりしていました。いずれにせよ、こうした“斬新な試み”が音楽業界のスタンダードとして定着したようすは見られません

最近では「K-POP は著作権をうるさく言わないからヒットした」ということがまことしやかに伝えられるのですが、どうも腑に落ちません。音楽チャートを見ても、著作権にうるさいどころかネット配信すら拒否するジャニーズが台頭しています。そもそも日本にも著作権をうるさく言わないアーティストたちはいます。muzie というサイトには、無料で楽曲を提供しているインディーズアーティストたちがたくさんいます。jamendo で提供される楽曲は、すべてクリエイティブコモンズ(CC)ライセンスが設定されています。しかし、今のところは muzie や jamendo が商業的なヒットにつながるプラットフォームになっているとは言えないようです。

要するに「K-POP が著作権にうるさくない」というのも、K-POP をヒットさせる一つのマーケティングメッセージに過ぎないのではないでしょうか。それで思い出すのが、クリス・アンダーソンの『フリー』です。フリーミアムというビジネスモデルを提唱し、無料化の効用を説いた斬新な内容で話題になりました。コンテンツを無料にして、付加価値で稼ぐともっともらしく説明されていましたし、絶賛していた人も多かったと思います。これに賛同してフリーミアムモデルを取り入れようとした書籍もあったように記憶しています。では、『フリー』の出版元である「NHK出版」は、その後どれだけの書籍でフリーミアムモデルを採用したのでしょう。そう思うと『フリー』は「一匹目のどじょう」にすぎなかった気がします。

さかのぼってソフトウェアの世界でも「オープンソース」が普及し始めた時期がありました。そういう話題に乗ろうという動きがあった現場の近くにいたこともあるのですが、それによって商業的な成功が得られたかというと疑問です。

もちろん、誰かが命を捨てる覚悟で、つまり捨て身でマーケティングに取り組むというのであれば、それを否定するものではありません。誰にも自分で自分の道を決める権利があります。しかし、成功事例の一面だけをとらえて他人に対して命を捨ててでもやれというのは、ただの無責任でしょう。

まあ、「ステマ」と言ってみたかっただけです>タイトル

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