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国際化(日本語)ドメイン名は普及するか

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先のエントリには、例によって迷惑トラックバックが色々ついていました。もう削除しましたが、そこに国際化(日本語)ドメイン名が使われているものがありました。その国際化ドメイン名(IDN=Internationalized Domain Name)の標準化は4年も前に行われていたのですが、いまなお普及が進んでいるとは言えない状況です。

従来、ドメイン名に使える文字は英数字とハイフン(最初と最後以外)の組み合わせでした。しかし、英語以外の言語では、これ以外の文字が必要になることもあり、検討が進められてきたのがドメイン名の国際化対応です。.jp では2003年に正式に使えるようになったのですが(※1)、レジストリの思惑とは裏腹に、なかなか利用が進んでいるようにはみえません。

国際化ドメイン名の仕組みは、それほど難しいものではありません。文字列をいったん Unicode として正規化し、"xn--" で始まる Punycode と呼ばれる方法で英数字にエンコードするだけです。これで従来の文字セットだけが使われるようになり、既存のインターネットの仕組みを変更せずに国際化ドメイン名を使えるようになるのです。Punycode のエンコード&デコードはアプリケーションの仕事ですが、(FireFox もサポートしていますが)Internet Explorer 7 での対応が発表されたときには、かなり期待感も高まりました。このころ「東京.net」というドメイン名が1万ドルで取引されています。

しかし、エンコード&デコードを処理しなければならないのはブラウザに限りません。たとえば Windows Vista に付属の Windows メールは国際化ドメイン名に対応していません。実際、主要なメールソフトが対応しなければ、メール用に国際化ドメイン名を使うのは難しいでしょう。ブログや掲示板などのツールでも同じです。"http://" ではじまり ".com" などで終わる文字列を自動的に URL と判断するような仕組みを持つものは多いのですが、その間に国際化文字列が入っていて問題がないように修正しなければなりません。国際化ドメイン名が普及すれば、アプリケーション側も追従してくるでしょうが、鶏と卵の関係で、なかなか進みません。

もうひとつ問題なのが、フィッシング詐欺に悪用されかねないことです。Unicode 文字セットには、通常のアルファベットに類似する別の文字が存在します。たとえば http://www.itmedia.co.jp/ と似たドメイン名 http://www.itmediа.co.jp/ を、うっかりクリックしてしまうようなことはありそうです(。

日本レジストリサービス(JPRS)は、日本語ドメインの普及に積極的で(売れるものが増えますからね)、通常の汎用 .jp ドメインの卸価格は 3,500円と推定されているところ、日本語ドメインに関しては非常に安い価格(数100円程度?)に設定されているようです。また、膨大な駅名ドメインを使った駅街ガイド.jp などのキャンペーンサイトも作っています(IE7 や FireFox で「有楽町駅.jp」のような <駅名>駅.jp と入力してみてください)。

キャンペーンなどで、別のサイトへの転送用に国際化(日本語)ドメイン名が使われることはあるかもしれませんが、最近の流行はドメイン名を入力させるようも、[検索]ボタンを押させることのようです(※2)。そもそも、ローマ字ドメインを取得せずに、日本語ドメインを使うのは、あまり好ましいとも思えません(「namacha.jp」を取得せずに使われている「生茶.jp」のような例はありますが)。そう考えると、(少なくとも日本では)国際化ドメイン名普及の道のりは長そうだというのが正直なところです。

※1 TLD によって違います。.org は、レジストリが変わった際に国際化ドメイン名をサポートしないという発表をしたのですが、結局 2005 年に対応しました。

※2 これはこれで、悪意の SEO によって別サイトに誘導されてしまいかねない問題はあるのですが、たいていはテキスト広告と連動させることで対応しているようです。シンプルなドメイン名を取得して(あるいは購入して)転送させる方が安上がりだし、問題も起きにくいと思うんですけどね。

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