プロジェクトミューズ バイリンガルプロジェクトは辛いよ ~その9~ 強制送還
ある週末の夜中に携帯がなった。GSM対応の日本の携帯なので仕事関係だ。
「ミッキーさん、ジョンが成田で足止めされて、明日強制送還らしいんです。」
「はぁ?どうしたのですか、一体。」
「よくわかりませんが、ずっといるからですかね?」
「6週間に一度は帰国しているから、一回の滞在が90日以下であることという制約には適合しているけれど、一年の半分以上を日本で過ごしたということかしら?」
「そうらしいです。それってうちの責任ではないですよね。」
「もちろん違いますよ。そういうことは人材を提供している請負業者の方でちゃんと管理しておくべきことですから。それに彼らは外国で仕事をするのは毎度のことであって、今回が初めてではないし。」
「罰金とかペナルティとかうちにはチャージされないですよね。」
「されませんよ。もし業者が何か言ってきたら私が交渉を担当しますから大丈夫です。」
「ああ、良かった。」
「それにしても、本人もびっくりしたでしょうね。入国の際にNGが出るなんて。」
このプログラマーは自分が剣道をやっているせいなのか大の日本びいきで、プロジェクト当初から参加している一番の古株。自分から志望して来たらしいのです。
お酒も好きで日本語も片言の単語を並べるような前向きな姿勢を見せていた性格は良さそうな人です。
けれどもアーキテクトではなくて単なるプログラマーだったために、製品の詳細知識もシステム開発のノウハウも不十分。解析能力も設計書を書く文章力もないので、人はいいのだけれど実践力には全くならず。(泣き)発注側はそれを知らずに一生懸命彼に要件を説明し概要設計をしてもらおうとして半年を無駄にしたことはさておいて、、、、。
このプロジェクト、今では国連顔負けの状態で、本国イギリスから来ている人は一人だけ。プロジェクトマネージャ(事務方)とアーキテクトは南アフリカ、プログラマーはチリ、ポルトガル、ルーマニア、ブルガリア、インド、中国、テスターはフィリピンだ。英語は共通語ではあるけれど、公用語には程遠く、通訳を介しても相手が英語ができないという状態さえ発生しているのです。彼らも所属こそ同じ会社ではあるけれど、異なる現地法人から派遣されてきており、その会社の契約社員(プロジェクト単位での契約)ではないかと思われる人もいます。
プロジェクトミューズでは、6週間東京に滞在した後、2週間本国へ帰るというパターンでローテーションしています。プロジェクト単位での派遣では就労査証(ビザ)は発行されていないと思われます。ビザも含めて人的資源の管理と責任は人材を派遣している請負業者にあるのですが、発注側も戦力を一人失うことによる影響というものは考慮しなければなりませんので、全て丸投げして自分だけ知らん顔しているわけにもいかないはずです。
でも前科や逮捕歴があるならまだしも、普通のビジネスマンで強制送還されるなんて。次回から入国手続きがややこしくなりそうです。
この事件があってから早3ヶ月が経ちました。彼は在宅勤務になって喜んでいるかも?!