プロジェクト ミューズ:バイリンガルプロジェクトは辛いよ ~その10~ リリース祈願
1年近くもリリースが遅れているプロジェクトミューズ。
一応、現時点のリリース目標は5月連休明け。機能開発は年度内に済ませ、ベータリリースをする予定。
リリースが成功裏に終了するよう元旦に祈願に行こう!と言う案が顧客から出たそうです。(実際は「行こう」というお誘いよりも「行くので全員参加するように」という業務命令に限りなく近いのですが。)
日本人的にはまあそれもありかなとあまり違和感がないのですが、欧米人にとって、この「祈願」が曲者だということをあらためて知らされました。
まず神様にお願いする、という行為自体が物議をかもし出すのです。日本人にとって「神様」の存在は比較的曖昧で、八百万の神様を広く受け入れる傾向にあります。特に元旦に祈願する「神様」には具体的なアイデンティティがない概念としての神様です。
ところがキリスト教にもイスラム教にも明確な「神」の存在があり、その神以外の「神様」にお祈りすることは自分の宗教に反する行為ということになるわけです。ヒンズー教やその他の宗教については言及できるだけの知識が私にはないのでコメントを避けますが。
だから仕事に宗教を持ち込むことは少なくともアメリカでは違法行為なのであります。宗教の自由を認めるとともに宗教に関連する行為を強制することはできないのです。いくら「日本の伝統的な慣習」であっても元旦の初詣に誘い、仕事に関することを祈願させるというのはハラスメントに相当すると言うわけです。
もしアメリカで、上司が教会に部下を連れて行き、プロジェクトの成功を祈願させたら、部下としては宝くじを当てたくらいに喜べるのだそうです。というのはその上司を訴え、一生楽に暮らせるくらいの金額を請求できるからだと言うのです。
おそらく、日本の伝統的慣習を体験させてあげようと初詣に誘っただけでは訴えられることはないと思いますが、そこで「仕事に関連することを祈願させる」という行為がNGなのです。
もう一つ、プロジェクトの成功祈願の問題点、というか欧米人には理解されない点は、なぜ自分達でその成功・失敗をコントロールできる範疇にあるプロジェクトの運命を神様にゆだねなければならないのかです。神頼みは「人事を尽くして天命を待つ場合に限る」という意識は欧米人の方が強いのでしょうか。プロジェクトの成功を神頼みしなければならないくらいなら、そのマネージャは即座にクビにすべき、というのが、この話をしたシリコンバレーの某幹部の反応でした。
もしかしたら、欧米のベンダーはプロジェクト成功祈願を「自分達は能力なしと判断された」と誤解してしまうかもしれないのです。
統括部長様、プロジェクトチーム全員を代表して、私達の分までプロジェクトの成功を祈願して来てください。そうしたら、宗教にからむ国際問題にまで発展させずに済みますので。