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IT業界を四半世紀見てきたジャーナリストのこだわりコラム

「あなたは私たちに何をしてくれますか?」

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 「まじめに始めたねぇ」
 前回、初めて書いたこのブログを見てくれた仕事仲間から、こう冷やかされながらも、今回も私の頭の中を巡っている問題意識を率直に書いてみたいと思います。今回のテーマは、企業、とくに中小企業のIT化におけるベンダー側の取り組み姿勢について。敢えてベンダー側の視点で考えたいと思います。

 全国に多数存在する中小企業の立場から、それぞれのIT化への基本的なニーズを私なりに捉えると、次の2点に集約されるのではないかと考えます。
①自社のビジネスの現状を踏まえて、本当に投資対効果の高いITを導入したい。
②そのIT化についてトータル的なアドバイスを行い、システムを構築してくれる、信頼できる会社とつき合いたい。
 これらのニーズは、決して目新しいものではありません。しかし、2点とも顧客である中小企業の、とくに経営者に本当に満足してもらうレベルに達するのは至難の業です。

 こうした基本的なニーズを踏まえたうえでベンダー側の取り組み姿勢を考えたとき、私はとくに次の2つのポイントを挙げたいと思います。
 1つは、中小企業向けのソリューションサービスをパッケージあるいはセット商品という捉え方だけで対応するのは得策ではないと思われることです。これは先ほど述べた基本的なニーズにも直結しますが、まずベンダー側として大事なのは、顧客にとって本当に投資対効果の高いIT化を、親身になって考えることです。その結果、パッケージ商品が適合するのならば良いですが、顧客の立場からすると「商品ありき」といったベンダー側の論理に基づくセールスにしか見えないケースが、まだまだ後を絶たないように思われます。この点については、「そんな手間をかけていると利益が上がらない」とのベンダー側の声もよく耳にしますが、そこをいかにビジネスに結び付けていくかが、まさしく知恵の出しどころではないでしょうか。

 もう1つは、営業マンやSEなど顧客にダイレクトに接する人たちは、顧客に本当に求められる存在にならないといけないということです。かつてあるユーザー企業での取材で、IT担当役員がこう話してくれたことがあります。
 「私はうちの会社に来られるベンダーの営業やSEの方に最初に必ず、あなたは私たちに何をしてくれますか? と聞くようにしています。この質問に的確に答えてくれる人は意外に少ないんですよ」
 この質問は、顧客対応の意識と姿勢を問い、さらに本人のスキルを問う厳しいものです。とくに中小企業の場合、この質問は経営トップから投げかけられると覚悟しておかなければなりません。さらにこの問いかけは今回のテーマに限らず、お客さん相手に仕事をしている人なら誰にも当てはまることかもしれません。

 ではもう一度、このブログを見ていただいている皆さんに。あなたはお客さんからこう問われました。
 「あなたは私たちに何をしてくれますか?」
 果たして、あなたはお客さんを納得させる答えができますか?

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