差別化としてのブランディングが無力化する現代の処方箋Vol.3
前回のおはなしでは、ブランドが効力を発揮していない時代になったとはいえ、企業はし過ぎるくらいの努力をしている、という説明をしました。
容易には他社の製品と判別できないような少しの差にこだわり、大袈裟なくらいのマーケティング戦略を仕掛けて、むしろそうした間違った方向性への努力が企業業績の向上という指標では報われていない、というおはなしです。
さらに、せっかくそこまでして非情なくらいの努力をしているのですが、ユーザ側から見ても自社商品を選んでもらうための差別化、競争戦略がうまくいっていない、というおはなしもしました。
今回は企業のブランド崩壊の現場について、書いてみたいと思います。
ブランドが崩壊して止まらない
事例を挙げた方がわかりやすいと思いますので、現在立て直しが急ピッチで進んでいるシャープを中心としてテレビ用の液晶分野の例を使います。
ご存知のとおり、シャープは液晶分野に商機があるとみて、思い切った巨額投資を実行しました。
その結果が、世界の亀山モデルと呼ばれる液晶分野の強力なブランドの確立と成功でした。
ところがその後、韓国のサムスンを中心としたメーカーの猛追を受けて、とうとう液晶のシャープは同分野では陥落してしまったのです。
敗因はいろいろあるでしょうが、この場でそれら1つ1つを検証していくことは割愛させていただきます。
とにかく言えることは、いくら強力なブランドを確立したとしても、長続きしなくなったのが現代という大競争時代なのです。
シャープにしてみても、今でこそ必要な投資を実行することができずに縮小均衡に陥っていますが、当時はそれこそ大きな金額の新技術への開発投資を実行していたはずです。
成果の1つが液晶の技術であるイグゾーであることは知られたところです。
ところが優れた技術の割にはそろそろ当時優位であった先行者メリットも薄れてしまって、果実の収穫も中途半端に終わってしまったのです。
ブランド崩壊が示すもの
いくら大企業であっても、経営の屋台骨を支えるためにせっかく築き上げてきた製品のブランド力が落ちてしまったら、経営に与える打撃は相当なもので、社業が傾いてしまうくらいです。
ところが、昔は通用していたブランド力の崩壊があらゆる業種業界で見られるようになったのが現代なのです。
我々消費者は、モノを買う現場における商品の選定の場面で、昔は迷わず手にしてレジまで運んでいた自分の中で価値を感じていたブランドを、何のためらいもなく裏切って少しでも安い他社製品を選ぶ時代になったことは、企業の製品開発を昔とは比べ物にならないくらい非常に困難かつ難易度の高いものにしてしまったこととは無関係でいられないのです。
本日は、ここまで読んでいただきまして、有り難うございました。
次回は、いま最も必要な差別化・競争戦略とは何か?について、書いていきます。
お楽しみに!