広大なるネットの海は神々のおわす処
この広大なネットの海には、
情報もあふれているが、神々もまたあふれている...。
ネットの海にいる神とは、
「私の理想を具現化してくださる才能」
のことだ。
さて、
デスクに張り紙をしたものの、一向に落書きの勢いは衰えず、
落書きの範疇を超えた絵がクリアファイルにたまっていくのと同時に、
私は、ネットの海に「萌え」を求めてさまよいだす。
二次創作のサイトは星の数より多いのだが、
同じジャンルで、同じキャラ萌えで、
さらに嗜好の合うサイトに巡り合うのは
なかなかに難しかったりする。
何年か前に、茨道(※)にハマッた時は、
たったのひとりしか神様を見出せなかったこともあった。
しかしながら、
今回のハマりものは
今まさに勢いを増す大手ジャンルであった。
さらにいうと、厨ジャンル(※)でもあった。
数が多すぎるのも、それはそれで大変だ。
「すいません!間違えました!」とか
「ごめんなさいごめんなさい!無理です!」とかつぶやきつつ、
アクセスした途端に引き返し、引き返してはまたさまよう...。
そんなことを繰り返しながら、
そのサイトにたどり着いた時、
「あなたが神か?!」と声無く叫んだと同時に
一応アカデミックに学んだはずの私の絵心はたいそう凹んだ。
今流行りのアニメ系とも萌え系とも一線を画す
恐るべきデッサン力に基づいたその絵師に惚れこみ、
隅々までサイトを眺めると、
どうやらその絵師はフツーの学生さんらしかった。
絵を学んでいるわけでもないようだ。
才能=ギフトってこういうことか~...と、凹みつつ、
「この神様産めるな...たぶん、
こんな娘なら産んでみたかった」などと、詮無いことを思いつつ、
その絵師の描き出す二次創作世界に惚れこんだ私は、
そこに掲載されているメアドにメールを送った。
「あなたが神か!」とはもちろん書かないが、
まあそんなような内容である。
そして、何回かメールのやりとりをした。
ある日のことだ。
そのことを長い付き合いの友だちに報告した。
「ああ、アレいいですよねー私も好きなんですよー、
とかってメールやりとりするんだ?」
とコメントした彼女に、私は
「そんな通り一遍なこと話すかよ!」
と言い放つ。
(好きとか良いとかそんなことは大前提であり、
(当たり前すぎて話す必要もないことなのだ。
その時、長い付き合いのあるはずの彼女の目は
慣性の法則にしたがって遠ざかる宇宙飛行士を見つめる
「HAL9000」のようであった...。
※茨道
きわめてマイナーなジャンル、もしくはカップリングを嗜好すること
※厨ジャンル
困ったファンや私のような初心者の割合が多い、とされているジャンルのこと