私もコミケで売ってみた~その4 老眼とスケブ~
コミケのような同人誌即売イベントにおける目的行動のひとつに
「スケブ」というものがある。
スケブというのはスケッチブックの略だ。
こぶりのスケッチブックに、好きなサークルの作家に直筆で絵を描いてもらい、
それを集める、というコレクター行動だ。
コミケのサークルスペースには基本的に作家本人がいる。
同人作家はそこでは、実生活の現状がどうあれ「作家」なのだ。
なので、有名漫画家のサイン会にファンが集まるように、
規模の大小はあれその小さなスペースのひとつひとつに
ファンがついていたりする。
一千部以上を頒布するような人気のサークルの場合は、
ファンが多すぎてさばききれない(あるいは転売目的の場合に対処するため)
といった理由で「スケブはお受けできません」としているところもあるが、
規模の大小に関わらず、スケブを受けるか受けないかは
それぞれの作家のスタンスで決まる。
(最近の事情としては、普段デジタルで絵を描いているので
アナログで描くのに時間がかかる、という場合もあるようだ)
というわけだが...私は、そのスタンスを決めていなかった。
「私、萌え萌えきゅ~ん♪って感じの絵は描けないのよねえ...
流行りの絵柄でもない私にスケブを頼むようなお嬢さんはおらんだろうよ」
と、思っていたからだ。
なので、
「ご本人ですか? スケブお願いできますか?」
と言われた時、
3秒くらい固まり一瞬の逡巡の後、スケブを受けてしまった。
想定外のことに、どういう構図でどういうポーズの絵を描いたものか、
白いページを見つめたまま脳みそが真っ白になる、という
締め切り前の江口寿史のような状態に、しばらくの間なっていた。
そして、よろよろと鉛筆を動かし始めて「困ったことになった」と思った。
えるしっているか ろうがんはてもとがみえづらい
正直に言おう、私はもう老眼が始まっている。
40すぎると結構すぐ来るよ、老眼。
通販の読書用虫眼鏡が必要なほど酷い老眼では流石にないwが、
その日、私は広い空間がよく見渡せるように
度が強めの近視用使い捨てコンタクトレンズをつけていたのだ。
なので、遠いところはよく見えるが手元に焦点が合わない状態だった。
(どのくらい手元が危ういかというと、爪がうまく切れないくらいの感じ
外せばいいのだが、ここでおもむろにコンタクトを取り出すのもどうだろう...
当社比で一番買い手が多い時間帯に席を外してトイレにいくのも勿体無い...
っていうか、ポーズどうしよう...とぐだぐだ考えつつ、
ちらほらと買い物にきた人と話したりしつつ、
結局、コンタクトを外さずにスケッチブックを若干離しぎみにして絵を描いた。
やたら時間がかかった上、たいしたものが描けずに、
頼んでくれたお嬢さんには申し訳なく思いつつ、
とりあえず
「次回からはコンタクトはやめたほうがいいな」と学習した。