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ACCS久保田が著作権ほか普段感じていること

何でもかんでも刑事摘発の対象とすべきではない

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前回、ACCSが調査などを通じて捜査協力を行っている刑事事件について書きました。こうした活動について、ためにする告訴だとか権利の乱用といった意見を聞くことがあります。しかし、いずれにも誤解があります。

そもそも告訴とは、犯罪の被害者が捜査機関に対して行う被害の申告と犯人を処罰して欲しいという意思表示ですから、既に発生した犯罪被害者が告訴を行うこと自体は当然の手続です。犯罪をでっち上げて告訴しない限り、権利の乱用という概念自体が当てはまりません。また、窃盗罪などの犯罪では、犯罪が発生すれば捜査機関が捜査を行い、必要に応じて検察が容疑者を刑事起訴します。そこに被害者の意思は反映されないのに対し、親告罪である著作権法違反事件の場合には、刑事起訴の要件として著作権者の告訴を必要としており、権利者としては「告訴をしない」という選択も可能になっているのです。

当然、私は、何が何でもどんな侵害行為でも刑事摘発の対象にするべきではないと思っています。年間30件の事件が多いか少ないかは議論があるでしょうけど、実際の侵害件数は、どう少なく見積もってもその数千倍はあるでしょう。実際、昨年行った調査では、2006年10月10日の18時から24時までの6時間だけで21万ユーザーがファイル交換ソフト「Winny」を使っていたことが分かっています。しかし、あらゆる侵害行為をしらみ潰しに事件化していくといった考えは私にはありませんし、事実上そのようなことは不可能です。むしろ、権利者とともに、侵害行為を止めるように訴える地道な活動こそが、ACCSの本分であると思っています。

例えば、オークションサイトへの海賊版出品に対しては、オークション運営者と協力して海賊版の出品を停止させる措置を執るようにしています。ヤフーオークションでの出品停止は、3年で約35,000件に及び、ビジネスソフトについてはかなり海賊版出品が減りつつあります。また、Winnyユーザーによる著作権侵害に対しては、これまで著作権法違反容疑で5人が逮捕されていますが、その他の多数のユーザーに対しては、注意喚起を目的として、各プロバイダを通じて著作権侵害行為を行わないようにとのメッセージを送る活動もしています。

犯罪被害者である著作権者が告訴を行い、刑事事件の被告となるのは、こうした注意を受けながら無視して侵害行為を継続しているか、大規模に侵害を行っているかなど、悪質な行為の場合に限られます(何をもって「悪質」な侵害だとするかについては議論があるところですが、このように一定の「ハードル」は存在しており、この点からも「乱用」という指摘は筋違いだと言えます)。こうした注意を受ける人の多くは違法であることを知りながら行っていると思われ、もはや捜査機関に告訴を行い刑事責任を追及するしかないのです。

ちなみに、ACCSの活動は、特定の会員企業の告訴を支援するためではなく、違法行為がない社会にすることを目的としています。そのため、刑事摘発が行われた場合は、他の侵害行為者に対する警告の意味を含め、広報することがACCSの重要な仕事です。さらに、著作権関連の講演を昨年度は国内で約80件と海外においても行っていますし、セミナーも開催しています。これらも、侵害行為を止めるよう訴える地道な活動です。

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