著作物の利用は可能な限り契約でカバーを
私が理事を務めている特定非営利活動法人全国視聴覚者情報提供施設協会(全視情協)と、作家や劇作家が会員の社団法人日本文藝家協会が、小説や戯曲などの言語の著作物の利用に関し、契約書を取り交わすことになりました。全視情協に所属する施設や団体が視覚障がい者に音訳資料や拡大写本を製作したり提供する際、日本文藝家協会の管理委託著作物については一括して許諾を受けるという内容のものです。
これまで、障がい者団体は、情報アクセシビリティを高めるため福祉目的であれば、どんな著作物でもあらゆる状況で利用できるように、制限規定によって著作権の対象の例外とするよう働きかける運動を行ってきました。でも、著作物は、小説・新聞や音楽や写真や映画やプログラムや舞踏や建築など多岐にわたり、使い方もユーザーによってさまざまです。それを全て同じ土俵で議論するとなると、あっちを立てればこっちが立たず、となりかねない状況にあります。
現在のように利害関係が複雑な当事者が幾十にも折り重なって存在している状況では、あらゆる関係を考慮して法律に一律の網を掛けるのは、そもそも無理があるかも知れません。それであれば、使い方の特性に合った協議を個別にした方が、法律を変えるよりもスムーズに目的が達せられるのではないでしょうか。今回の契約は、その一例と言えます。
日本文藝家協会の著作権管理委託者数は、Webサイトによると3,192名だそうですが、もちろん、管理委託していない作家の作品を利用することはできません。それでも、これまでの状況から見れば一歩も二歩も前進したことは確かです。今回は、両当事者の努力と、何より権利者の理解があって実現したわけですが、携わってみると、契約で相当カバーできることが分かりました。さらに、この契約の遵守をICTやIT技術で担保する方法も生み出されることでしょう。
いずれにしても私は、関係当事者の誠意と努力によって、著作権が守られると同時に著作物の利用が促進されることを幸せに思うと同時に、今後も地道にこのような活動を続けていきます。関係者の皆さまお疲れ様でした。