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ACCS久保田が著作権ほか普段感じていること

著作権侵害が懲役10年以下になる意味

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いろいろコメントをありがとうございました。何人もの方が、著作権および知的財産制度に問題意識を持っておられるのを心強く思いました。こういった問題意識こそが法を変えていくことにつながると考えています。どんどん議論を深めていければと思います。

さて、初回に少し書きましたが、著作権法違反の罰則は、今年の7月から一部が「10年以下の懲役または1000万円以下の罰金またはこれらの併科」に引き上げられます。この「重み」の想像がつくでしょうか。ちなみに、窃盗罪が「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」、背任罪は「5年以下の懲役又は50万円以下の罰金」、住居侵入罪は「3年以下の懲役または10万円以下の罰金」。殺人罪の場合は「死刑または無期もしくは5年以上の懲役」です。

通常、刑罰の重さは、法益(法によって守られる社会的な利益)に見合ったものになっています。他人のものを盗む「窃盗罪」は、もちろん何をどのくらい、どのような方法で盗んだかによりますが、最高では10年の懲役が相当であると考えられているわけです。そして、誤解を恐れずに言うとすれば、著作権侵害罪についても、窃盗罪の場合と同等の法益への侵害があるのだと、日本では決められたということになります。

これは小泉首相以来、知的財産立国を標榜し政府が進めている方針に則った法律改正です。これからの日本は、ハードウェアだけではなく、ソフトウェアや、マンガ、アニメ、映画、音楽などコンテンツビジネス、情報産業を育てていこうという意思の表れであり、そのような産業育成を妨害する要因のひとつである著作権侵害行為は、厳罰に処するという意味が込められています。言い換えれば、税金の元としてこれらの産業に負うことが大きくなるということだと思います。

ちなみに、親告罪で懲役10年以下の罰則が設けられるのは著作権法だけになるようです。この点は難しい問題をはらんでいるので、回を改めて書きたいと思います。

いずれにしても、著作権の侵害行為が窃盗罪と同じ重さの刑罰に処されるほど重視される時代である、ということです。ACCSが解決に関わっているだけでも、毎年、数十人が著作権法違反で逮捕・起訴されていますが、軽い気持ちの違法コピー・違法アップロードが大きな代償を生むという時代でもある、ということです。

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