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エンタープライズコラボレーションの今と今後を鋭く分析

やはりITは技術よりは運用が難しい

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 昨日(2008/06/24)に総務省のホームページに「ICTの利活用及び利用環境整備に関する現状評価について」という報告が掲載された。
 これは「u-Japan政策」(2004年12月)の中で、「2010年までに国民の80%がICTは課題解決に役立つと評価する社会に」、また、「2010年までに国民の80%がICTに安心感を得られる社会に」という政策目標が掲げられていたものについて、達成状況を把握するために行われた調査の結果である。

 調査は総務省と野村総合研究所の共同アンケート調査で実施されている。ICTを①医療・福祉分野、②教育・人材分野、③就労・労務分野、④行政サー ビス分野、⑤文化・芸術分野、⑥企業経営分野、⑦環境・エネルギー分野、⑧交通・物流分野、⑨安心・ 安全分野、⑩電子商取引分野と10分野に細かく分けて、一般生活者と106人の有識者を対象に調査されており、政府からの公報という事で資料はダウンロードできる。

 詳細は資料に譲るが、端的に結論を紹介すると、

 日本におけるICTの普及は順調に進んでおり、全分野平均で半数(約46%)の回答者がICTを利用した経験ありと回答おり、8割以上の回答者がICTは役に立つと答えている。
 反面、ICTの利用の為の環境の整備や運用面の対策については、安心感を得ているのはわずか23%と、多くの回答者が不充分だとしてu-Japan政策の達成目標を大幅に下回っている。

 良く言われている事だが新しい技術を知って貰うことや単に導入することよりも使って貰うことや使って貰う体制や環境を整備することのほうが何倍も難しい。
 調査報告書は結構な頁数があるので、私が読んだ中で気になった部分をメモ&インデックス的に以下に羅列しておく。

  • 文化・芸術分野のデジタルアーカイブ関係『図書館・美術館・博物館等が保有する所蔵資産(書籍、芸術作品、歴史的記録)を、デジタル化すること』は効果が高い。特に生活者では64.5%が役にたつと回答(全体で20位)したのに対して有識者では83.5%(全体で12位)が役に立つと回答。{調査結果(別添2)のP9、P14、P20、P25}
  • しかしながら、文化・芸術分野で将来最も期待されているのは、『図書館ワンストップ検索』(54.2%)『オンラインコンテンツ配信』(49.5%)よりも高い。コンテンツのデジタル化よりも、まずは現在あるものをもっと使い易くしてくれと言うのが伺える。{調査結果(別添2)のP83}
  • 『中小企業が経営の効率化・高度化を図るために、ASP・SaaS 等のサービスを導入すること』が役に立つかについては、有識者での実感は高い(77.7%)が生活者のその数字(43.9%)はかなり低い{調査結果(別添2)のP15、P27}
  • 『ICTシステムの効果を上げるために乗り越えるべき問題点』に関する選択肢で、就労・労務分野では業界慣習が最も大きな障壁になっているが、企業経営分野では業界内でのシステム標準化の遅れが指摘されていた。全体としてもこの2つの障害が多く指摘されている。{調査結果(別添2)のP36}
  • 『ICTを利用したことがない理由』で、就労・労務分野と企業経営分 野で『自分にとって必要ないから』がダントツに1位になったのは、実に興味深い。{調査結果(別添2)のP37}
  • 最近小林さんが注目していた『テレワーク勤務の拡大』は、就労・労務分野での期待する将来像としては『職場をつながる託児所』の後塵を拝している。まだまだよりリアリティの強い部分での改善を求める声が強いらしい{調査結果(別添2)のP81}

 そして、ICTの利用環境整備に対する設問のうち『知的財産権への対処』の部分でちょっと興味深い結果もある。

  • 生活者はこの分野での課題として『模倣品、海賊版の不正流通』や『ファイル交換ソフトでの不正なファイル交換』を重視していて『コンテンツの2次利用の不足』については問題意識が低いのに対して有識者の多くが『コンテンツの2次利用の不足』への対策不足を指摘している。
  • 生活者で『コンテンツの2次利用の不足』の対策が進んでいないと答えたのは55%なのに対して有識者のそれは実に76.7%になっている。但し面白い事に対策が進んでいるという回答も、生活者の4.5%にたいして有識者は7.8%と高めである。{調査結果(別添2)のP51、P63}
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