通達・連絡が読み切れない~社内情報連絡の課題
コンサルタントという職業は、実務だけでなく営業もやる。営業という立場では、顧客先に訪問して今困っている課題や興味分野について話を聞く機会も多い。昨年も書いたのだが最近企業で特に話題になるのが「社内情報連絡」の仕組みの見直しと改善だ。
昨今企業内における通達や連絡の文書は内容も数も非常に増えてきている。ところが企業における「社内情報連絡」の支援システムのほうは、実のところ今なお粗末なものが結構多いのだ。多くの企業では以前紙で行っていた仕組みを安易にそのままデジタル環境に持ち込んだだけだったりする。
例えば、紙でやっていた文書の受け渡しをそのままメールに置き換えただけの企業がある。こういった企業では通達文書はメールにて各部長(あるいは窓口担当者)に送信される。部長はそれを自分の組織の各課長に送る。課長はそれを適宜メンバーに転送する。こうして何段階かに転送されたメールのタイトルは「FW:FW:FW:~~」というようなヘッダーになって最終受け取り者にはタイトルだけではなんの事やらわからない状態だし、時には転送の過程で相当の日数を要してしまったり転送漏れが起きる。ちなみにこのやり方の場合、転送途中の人は中身を全く読んでいないというケースも多い(汗)
他の会社では、紙の時代に発信部署別や文書種類別に文書をファイリングしていた姿そのままに、イントラネット上に部署別、役職別および文書種類別といった複数の連絡文書用データベースを作成し、作成部署がそこに随時にどんどん文書を置くだけという仕組みを取っている。結果、社員は毎日5つも6つも連絡文書データベースを順番に開いていく羽目になる。そしてそういう安易に掲載された文書は、煩雑に誤字を修正したり出し直したりされるので、読み手側では何が最新の通達・連絡なんかさっぱり分からなくなる。
最近では、通達・連絡文書の処理に時間がかかりすぎて業務に支障をきたすというユーザも出てきている。実際に1日に社内を駆けめぐる通達・連絡ひとつひとつをきちんと読み込もうとするとそれぞれに15分から20分程度の時間が必要になる。1日の労働時間は8時間であるので20~30通もの文書が配信されるとそれを読むだけで全社員の1日が終わってしまうことになる。この結果として、通達・連絡を読まない、あるいは読み飛ばす社員が増えるそうだ。これに反して昨今の企業には内部統制強化やコンプライアンス遵守という圧力も強くのしかかってきている。本部側としてももはや通達・連絡を垂れ流しに発信するだけでは許されない。ルールを徹底しそれを正しく認識させないとイザという時には会社の存続すら危ぶまれる事態になってしまう。
かくして、今年のIT投資動向調査でも「社内情報連絡」は引き続き上位である。(出典:CIOマガジンとITRによる調査)さて我々は最近立て続けにこうした課題を持つ企業へコンサルティングを実施してきた。その結果、社内情報連絡に関する共通的な課題やユーザの不満、ひいてはその見直しポイントはいくつかに集約できることが分かった。以下にそれを順に紹介する。
不満その1:余計なものが配布される
宛先や対象範囲が明記されない通達・連絡や安易に全社向けに発信されるものが多い。それだけでなく特定部門向けの通達がそのまま全社に配布されたりする。こういう企業は案外多い。
不満その2:通達・連絡が複数個所に散らばって配信され見落としてしまう
上記に書いたように、各発信部署毎に別々の仕組みで通達・連絡を発信したり、一般向け、課長向け、役員向けというように階層別に別々のデータベースに通達・連絡を格納するとこういう不満を呼ぶ。これは結果として同じ通達・連絡を複数のデータベースに登録する余計な作業と、ユーザから見ると同じようなものが何回も配布されるという別の不満も引き起こす。
不満その3:重要度がわからない
緊急の通達や連絡もそうでないお知らせ的な情報もごちゃ混ぜに配信される。通達も単なる連絡も混在、果てはニュースまでも同じ枠組みで配信される。こうなるとユーザは情報の取捨選択に追われてしまう。
不満その4:内容がわかりにくい。
通達・連絡の内容等が理解できないという意見。これはさらにいくつかに細分化される
・不満4-1:対象、想定読者が不明確
発信者側が最終的な読み手を意識せずに発信している。不満その1と同じであるが、その通達・連絡の対象部署や対象業務を文書の冒頭等のわかりやすい場所に明示すれば良いが、これが行われない場合、時には4000文字もの文書を最後まで読んで、初めて自分に関係ない通達・連絡だということがわかる。これは読み込み分の時間が無駄である。
・不満4-2:内容が難しい。
専門語を羅列した文章は論外であるが、過去に発信した別の通達・連絡を前提とした内容の場合にその旨が記載されていないので理解しにくかったり誤解を呼ぶケースは多い。発信側の立場の人はえてして受信側の立場の人よりも企業内で情報の獲得面で優位な立場にいることが多いので、無意識のうちにこういう通達・連絡を書く人は案外多い。
・不満4-3:結局取るべきアクションがわからない
通達・連絡を読んでその後結局どうすればよいか分からない。指示が不明確なものや「誰」がアクションを取るのかわかりにくい通達・連絡が来るとユーザは混乱するし、ひいては発信部署への問い合わせが増えるので2重の無駄である。「以上の趣旨を営業が顧客に説明する」「各部が調査して本部へ報告する」「各自心得て業務を行う」など最終アクションを明確に書いている通達・連絡はこうした不満を呼ばない。
・不満4-4:前後関係不明・矛盾
発信側の各部署が横連携無しに勝手に発信するために別の部署からのものと矛盾を生じていたり、あるいは「詳細は以前の○○参照」と記載しているのにその以前の通達・連絡が見つからない場所にあったりするとユーザのストレスは一気に増大する。
不満その5:余計な手間
上記の不満その4-3とも関連するが、アクションを取る必要がある場合に、具体的なアクションをとるのに余計な手間がかかるという不満が生じる。例えば通達・連絡で周知された文書を顧客に再配布しようとしたら、元が「で、ある」調だと、各自が再配布用に同じ内容を「です、ます。」調に書換えたりする手間が起き不満は増大する。
不満その6:報告義務通達が多い
通達・連絡には、発信側となる本部側が現場からの情報収集を行う為のものもあるが、これの頻度や負荷が高いと現場ユーザの不満は高まる。同じような内容の調査が重複して複数部署から発信されたり、調査結果がユーザの目に見える形で還元される、活用した結果の報告などが無いと徒労感を引き起こす。
不満その7:出しっぱなし
通達・連絡を出しっぱなしでメンテナンスしないのも散見される。こうなると以前発信した通達・連絡は今も有効なのかユーザは混乱をする。いちいち昔の通達・連絡を見直すという余計な手間も生じる。廃止分を隔離・廃棄したり有効期限を記載すればこれは起きないが、逆に一定期間が経過した通達をマニュアルに反映する作業を怠っているとこの不満を冗長する。
さてこうしたユーザの不満をどうやって解決すれば良いのか。我々は、このために9つの通達作成・発信の原則とこれを実現するためのシステムツールを使っている。
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