情報の危機管理はシステムより人から
1984年4月にIBMに入社した私ですが、その年に生まれた赤ちゃんが大学を卒業して新人として頑張り始めているのが今年。時の経つのは本当に早いです。
携帯でダイレクトに電話をすることに慣れた新人たちには、電話の取次ぎから研修しなければならない!という嘆きをそこここで聴きますが、もっと重要なことに気づかれている企業の新人研修担当は、そう多くはないはずです。
パソコン創生期に生まれた彼らは、10代の比較的早い時期からパソコンを「個人的に(たとえそれが学校の調べモノだとしても)」使ってきています。 インターネットもメールも、10年選手だ!という人もいる中、公的な使い方をしてきた人などほとんどいないのが当然ながら実情です。
それに対し、新人研修を担当する側は、社会人になってからパソコン、インターネット、メールを使い始めた人が多いはず。 そのため、個人的に“だけ”使ってきた人たちに対して、会社での使い方を改めて教えなければマズイという感覚にイマイチ至らないのはしかたないことかもしれません。
でも、記憶に新しいところでも、企業の信頼を揺るがすようないろいろなトラブルが起きています。
パソコンの画面に何かメッセージが出てきたとしましょう。
業務で使うことに慣れている入社10年以上の人たちは、ちょっとした操作で業務に支障を来たしてはいけないと考えて、しっかり画面のメッセージを読んで対応しますよね? 不安だったら、人に聞きますよね?
ところが、プライベートで当たり前のようにパソコンを使ってきた若手には、「メッセージは<Yes>をクリックして先に進むもの」という感覚が潜んでいます。 ですから、あまり慎重に読むこともせず、「××しますか?」<Yes>「本当にいいですか?」<Yes>と<Yes>ボタンを条件反射のようにクリックしてしまいがち。
この感覚が、とんでもないことを起こしたた例が記憶に新しいですよね? そう、ジェイコム株大量誤発注事件がソレです。
また、ウィニーによる情報漏えいは、企業から公的団体にまで幅広く起こっています。
さらに最近では、会議で話した新しいキャラクターのことを「今日は会議でこん話があって‥‥」と書いてしまってスポンサーから大クレームとなった話とか、コンペ相手にはナイショで一足先にクライアントに企画内容をチェックしてもらえたことを書いて大問題が生じた話とか、ブログをプライベートな日記代わりにしている若者らしい勘違いが原因の情報漏えいトラブルが多発している様子です。
「TO」「CC」「BCC」の使い方がわからずお客様のメールアドレスを大量にまいてしまったり、あるいは、発信人に断らずに個人メールを転用したメールをメーリングリストにポストしたり、というITオンチのおぢさまたちのうっかりミスはどんどん少なくなってきています。
それとは逆に、プライベートでパソコンやネットを「自分を表現したり他人とコミュニケーションしたりする便利な道具」として使いこなしてきた若者たちの手による、「そんな大事になるとは思わなかった」ミスが増えてきている時代です。
あと5年もしたら、小学生の時からポケットに携帯が入っていて、ごくごく当たり前にメールを使っていた平成生まれのニュータイプ(笑)が社会に出てきます。
その時、すぐ上の先輩も、その上の先輩も、「社会人としてパソコン、ネット、メールを使う際の規範意識」がなかったとしたら、どんなにセキュリティーシステムをしっかりしたところで、情報漏えいを初めとするトラブルは増える一方。
今のうちに、プライベートだけで使っている学生時代と同じ感覚で使ってはいけないということを、新入社員研修時にしっかり教えておく必要があるのではないでしょうか。
電話の受け答えの失礼は、謝って改めれば何とか収まります。
でも、漏れてしまった情報を、漏れる前の状態(誰も知らなかった時の状態)に戻すことは物理的にできません。
テレワークも推奨される時代だから、対症療法では絶対にダメ。 信頼を失う前の予防策こそベスト危機管理術なのです。
真剣にそう考える私は今、空き時間を使って、メールやメーリングリストのトラブルの事例、ブログに書いていいこと悪いこと、など、今の20代にわかりやすい(かつ眠くならない/笑)身近で具体的なケースいっぱいで、カリキュラムを考案中。
きっと、近いうちに大いに役に立つってくれると思っています。
本当は、大学時代など、入社前に体得してきてくれるのが一番いいんですけれどね。 (^_-)-☆