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グレーターベイエリア(大湾区)の互恵的な潜在アウトカム

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2月に入って、中国当局はグレーターベイエリアイニシアチブの開発に関する計画を発表しました。このエリアは香港、マカオの他、広州、深セン、珠海、仏山、恵州、東莞、中山、江門、肇慶などの広東省の都市を合わせた11の都市から構成されています。計画ではこれら11の都市の経済を2035年までにシリコンバレーに匹敵するような経済およびテクノロジーのハブに変えていくとしています。鍵を握る4つの都市、すなわち香港、マカオ、広州および深センがこのエリアの主要な中心地となります。これらの都市は同エリア内の地域的発展を牽引する役割も果たすことになります。

主な目標は、2035年までにグレーターベイエリアを1つの経済システムとし、主にイノベーションに牽引される発展のモードとすること、また住・職・旅行先として国際的にファーストクラスのベイエリアとして確立させることです。

11の都市を合わせると、人口が7000万人、GDPは合計で1兆5000億ドルになります。これがすぐにでも参入できる巨大な潜在市場であることは明らかです。

発展への課題

主要な都市を1つの経済的なハイテクハブへ統合すると、グレーターベイ全体において法制度が統一されていないために大きな課題が浮き上がります。現在、香港、中国本土の主要都市、およびマカオでは法律、経済および金融において異なる制度が取られており、領域内の発展を阻害しかねない要因となっています。

Elevate Blockchain Advisoryのアドバイザーであり、Smart City Consortiumのチェアマン、また、香港大学や香港理工大学、嶺南大学および香港恒生大学などの一流大学の客員講師を務めるEmil Chanは、この問題について次のように強調しながら語っています。「私たちは現在、香港、中国本土、そしてマカオの3つの領域内で、法律、金融、決済、および製造システムにおいて異なる制度を持っています。3つの領域を統一できれば、グレーターベイエリアにおいてより素晴らしいエコシステムを開発することができるでしょう。」

さらに、ハイパフォーマンスな公共ブロックチェーンであるOntologyの創設者、Li Junは、統合における障害についてのコメントの中で、次の点を強調しています。「法制度が異なるということは、異なる地域に存在するビジネスにとって多くの課題に直面することを意味します。そうなると、共通の法制度を構築するのは極めて難しく、こういった場合は技術的に信頼性の高いインフラが大いに利便性を発揮するでしょう。そこではテクノロジーが新しい共通の信頼プラットフォームのインフラとなるでしょう。」

この課題を克服するには、効果的な統合のためのプラットフォームを提供するテクノロジーの枠組みによる支援が求められるでしょう。

人の移動および身分証明における制約

境界をまたぐ人の移動に関する規定により、地域間での才能ある人材の往来が制約を受けています。例えば香港と中国ではそれぞれが独自の身分証明カードを発行しており、スムーズな人の移動に必要な標準化が欠けています。香港および中国の居住者はそれぞれ別々の身分証明のソースを持っていることになり、それぞれが異なるテクノロジープロトコルやデータベースであるため、行政にとって別々のソースをすべて1つの標準化された形式に効率よくつなぎ合わせるのは困難な作業です。中国本土を訪れる香港居住者は、オンライン決済および認証システムの多くが本土の身分認証カードしか認識できないため、越境するたびに日々困難な思いをしています。

そこで、グレーターベイの統合のためには、統一された身分認証システムを可能にする画期的な技術的ソリューションが必要不可欠なのです。

ビジネスの発展における障壁

例えば、香港でビジネスを行う際にかかる運営コストは、特にスタートアップ企業にとっては比較的高めです。グレーターベイがビジネスの競争力を育もうとするならば、ビジネスは香港や深セン、広州などの地域に比べて労働コストが比較的低い肇慶や中山、また恵州などの地域に移動する必要があるでしょう。

さらに、スタートアップ費用が高めの地域では、より多くの才能やイノベーションを惹き付けつるために、行政がスタートアップコストや運営コストの引き下げを行ってインセンティブを与える必要もあるでしょう。

さらに、地域内には才能ある人材や技術、資本、その他数々のファクタの流れを制限するような制度的障壁もいまだに存在しています。欧州連合に似た形で、これらが自由に行き交うことができるように便宜を図る枠組みが切実に求められています。

これらのファクタにより、地域内の行政や企業が協力し合い、実現可能なソリューションを開発する必要性が高まってきます。

実現可能なソリューション

上で取り上げたような課題に沿って考えると、グレーターベイの利益のためには、適切な統合の枠組みが必要なことは敢えて言うまでもありません。統合が実現すれば、ビジネスの全体および地域的なサプライチェーンの統合も進み、エリア内のビジネスの競争力も一層高まることになります。

ビジネス開発の促進

Greater Bay planで概要が示されている項目の1つにはこうあります。「世界最先端のテクノロジーおよび産業を目指し、イノベーションプラットフォームの開発を強化し、ビジネスのタイプやモデルと同時に新しいテクノロジーや産業を劇的に発展させ、主にイノベーションにより牽引され裏付けられる経済システムの開発プロセスを加速させること」。

これらを促進するために、行政と主要なプレイヤーは資金集めや新しいビジネスモデルへの容易なアクセスなど、スタートアップ企業へのインセンティブに取り組んでいます。ブロックチェーンは上記の項目に対処できる優れた能力を持つ画期的なテクノロジーの1つです。

例えば、Ontologyでは資本やリソースを一切持たない開発者や一般の個人が分散化アプリケーションを開発し、十分な支援を受けられるようなプラットフォームを提供しています。すると、スタートアップ企業は資本がないという制約を受けずに独自のアイデアや発明を打ち出すためのプラットフォームを持てることになります。これにより、スタートアップ企業が例えばフィンテックなどの産業のために新しいビジネスモデルを構築できるようインセンティブを与えることで、包括的にイニシアチブを支えることにもなるわけです。

Cyberportもこれを促進するための枠組みを開発しています。Cyberportの公共部門担当最高責任者のEric Chanはこれについて次のように語っています。「サイバーセキュリティ、AI、そしてブロックチェーンは、よりスムーズな統合の実現を支援する3つの主要なテクノロジークラスターです。」

ビジネス発展の障壁の解決を目指す香港特別行政区政府が所有する企業である同社は、グレーターベイエリアの開発の枠組みの元でテクノロジー企業や革新的な企業に対して香港の魅力をアピールすることを目指しています。これを実現するために、起業家精神を開拓し、スタートアップ企業に対して包括的な企業支援プログラムや創業資金へのアクセス、投資家とのマッチング、また手頃なワークスペースなどのサポートを提供します。これらを通じて、国際的な金融センター、特に成長著しいフィンテックセクターとしての香港のロールを後押ししています。「例えば、2カ年計画のCyberport起業支援プログラム(CIP)では、500,000香港ドルの金融支援を提供し、Cyberportに無料のオフィススペースを提供しています」とEricは語っています。

このような支援の提供により地価の高い地域におけるビジネス運営のコストが抑えられ、より一層のビジネス開発が促進されます。

身分認証の実現と越境決済の障壁

地域を越えた統合を実現するために、ブロックチェーンテクノロジーを活用することにより数々のソリューションが提案できるとLi Junは考えています。彼によると、フィンテックのような産業において、境界をまたぐ決済の効率性を高めるために「ブロックチェーンを新しいビジネスのコラボレーションプラットフォームとして利用することができる」ということです。例えば、ブロックチェーンベースのインフラ上で開発されたスマートコントラクトを用いれば、越境決済は数日と待たずとも瞬間的に解決できます。

さらに、グレーターベイエリアの行政によって認可される標準化されたデジタル身分認証ソリューションがあれば、居住者の移動が合理化されます。これを達成するために全く新しいインフラを再構築する必要はなく、複数の身分認証ソースをブロックチェーンにより相互に結びつければよいのです。例えば、1つの身分認証を行政のデータベースや領域内の銀行、様々なデータベースに散在するその他の公的組織に結び付けることができます。ブロックチェーンベースのデジタル身分認証を使用すれば、身分認証の所有者にとって透明性のある厳密な許可を与えつつ、すべてのソースを安全に結びつけることができるのです。

まとめますと、ブロックチェーンはすでに構築されているシステムを効率的に活用するために既存のレガシーシステムを補完する役割を担い、合理化されたソリューションを加えることにより標準化の進んだ統合を実現します。その後、行政やビジネスはこのデジタル身分認証ソリューションを取り入れ、各当事者が新しいデジタルデータベースインフラのための身分認証にアクセスし、これを検証することができるようになります。

「人やものを含むあらゆる種類の実体はそれぞれの身分認証を異なる地域や国々にマップさせることができるため、デジタル身分認証はインフラの主要な基礎となるのです」とLi Junは話しています。

明るい未来が待っている

グレーターベイエリアが今後数年のうちにシリコンバレーに匹敵することを目指しているなら、異なる経済の効果的な統合に関する枠組みを受け入れることが極めて重要です。現状では、ブロックチェーンやフィンテック、その他の技術的なソリューションはグレーターベイイニシアチブの目的達成を支えるために探るべき選択肢です。

グレーターベイエリアイニシアチブは、この領域が数々の才能やリソースに対して開かれることを考慮すると、その未来は明るいように見えます。2035年に向けた目標はすでに動きを見せ、このエリアにおける前述の主要なプレイヤは迅速な開発および統合を促すために必要な破壊的システムの探索と実装をすでに行っています。このペースや運動量で動けば、今後数年間のうちに技術的および経済的な力を持つエリアと国際的な競争力を特徴とするハブとなるエリアが世界に姿を現すでしょう。

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